記憶喪失物半分。今やHQくらいしか記憶喪失ドラマって余り見ないけれど、このくらい詰まっている内容であれば、飽きさせず読める。
今までセットは、セットでないと単独では力が弱いのを寄せ集めたのか、位に思うこともあり、正直、安く買ったつもりが結局高くついた気がすることもあった。ところがこれは、四者四様で、絵もいい。
「砂漠に消えた妻」ーHQぽい、なんちゃって王さまだが、いやみがない。「僕は最低の男だな。最後くらい 君の望みを叶えてあげようと思っていたのに 結局泣かせてしまった 本当に済まなかった」。
ありがちな台詞なのに、その流れでその台詞が入ってくると、胸に来た。122頁のキスシーンも綺麗。
「夢のウエディング」ー粗削りな感じも結構するが、映画的というか、絵画的構図というか、思いきった感じもかなり。226頁は特に印象深い。話はありきたりな、意外感の少なさぶりがあって、じっくり味わえる筋運びでないのに、絵が、描こうとしてる二人の気持ちをよく伝えている。244-5頁の、簡単に整理のつかない二人の描写が、こういうのが、ほかのHQにもあってくれたらもっと味わえたのに、という気がした。結婚式シーン、タイトルもあり外せなかったのだろうが、入れて損した気がする。それにしても、バーバラめ、という気持ちにさせられる。
「愛がよみがえる島」ーここも、クサイ台詞の筈なのに、「僕はまた何か傷つけるようなことを君にした」が、話にはまっていた。
「捨てられたシンデレラ」ーヒロインが「独裁者」と思うのも無理からぬ展開で、彼の気づきを描けてるのがすごいと思った。他のHQでも、相手のことを、横暴だ強引だ傲慢だ思い通りにならないと気が済まない等々ネガティブな評価がよく出てくるが、実際絵柄でそれを説得させることは、半分も成功してない位に思っている。ところが、この作品、彼の印象を絵と言葉、筋書き全てで、「独裁者」ぶりがわかる。それだけに、読み手の私はヒロインが無理して関係を続けても幸せでないのではないかと、素直に感想を抱きながら読み進めたため、この決着はストンと来た。本当にずっとそうなのかは信じるしかないがー。雨は上がったのだ、ということなのだろう。
このセット、その後の様子を少し描いているサービス精神ある作品に恵まれて、それも、付録が沢山付いてきた物を買ったように、なんだか嬉しかった。