ヒロインリアンは、離婚後自分の希望する職に就き歩んでいた。これは同性として素晴らしいと思う。彼女の願いによる「偽装新婚ハネームーン」は、ヒーローミッチを本格的に異端児として誕生させた。ミッチは、祖父や父という特権階級保持者の下に生まれた3代目だった。彼らの考えに沿う者としての自制心を教育され、それを受け入れる強さを持っていたことが 彼の苦悩の原因で、空恐ろしいと思うが、素晴らしいとも思う。今の日本の縮図を見るようでもあると思う。昭和の時代の父親は、快適で豊かな生活のためにワーカホリックの如く働き、その子供は平成に父となり、それを享受してより快適な生活を望んだが、そのまた子供は、令和の時代となって結婚、所有に拘らない束縛されない生き方を望んでいるのだから。ミッチは、法曹界に身を置くことを拒んでいたわけではない。それに付随する物に嫌気がさしていただけなのだ。自制の為に抑うつ状態となり、愛するリアンを失ったことがいつまでも彼の中に留まり続け、とうとうキレてしまったところからの物語。過去という箱の蓋を抉じ開けて、あの頃とは違う各々の視野と思考で復縁を目指す物語は、当然、若さを省みる痛みを伴いはするけれど、経過した時間がそれを納得させて昇華するに十二分な経験によって私を懐柔してくれた。不満なのは、新たなる2人の人生をリアンが拒否した時の理由が、新婚当時リアンのジャーナリストへの希望を諦めた苦痛と彼の家族に受け入れられなかった苦痛を繰り返させようとしているとみえて、 ミッチがどう理解していたかがハッキリしない事だ。恋愛と結婚は違うと 彼女はハッキリ言っているので ここに答えを用意してほしかったと思う。