正直、長く購入を躊躇っていた。紙版を立ち読みしたときジェローデルの崩壊ぶりが目についたこと、最終巻で彼のことを知って、何その斜め上!?、と驚愕し、幻滅したくなければ同窓会にのこのこ行くな、という鉄則を守っていたこと、による。
だがいざ読み出すと、40年というこの歳月を経たにしては、ここまで保っていることも、また、実に驚異的なレベルといえるのだ。特に、数年程度の経過で原型を留めないビジュアルで人物同一性をうたう漫画作品は世に多いことからすると。それに性格設定がブレを感じさせないこともポイント高い。
「エピソード編」と銘打っているだけに第1巻はそろそろっと様子見の顔出しでの小作品を4作展開という趣。次第に頁数を使って、前後編スタイルへ、と、しまいにはストーリーの体を成す感じ。
40年ぶりベルばら再開の時、掲載誌は50周年か何かの宣伝文句で広告を打っていた。好奇心で発売日何店舗もの書店を駆け回ったが瞬間蒸発し、購入出来なかった、あの凄まじさを思い出す。お祭りであり、記念的にその時の号だけ買いたかった。しかし、シーモアさんで本作配信開始を知っても、冒頭の通り逡巡。やっと割引の効くチャンスに、遂に。
4巻も出たことは、次第に池田先生がカンを戻されたような印象も持った。といって1巻目に他の巻より違和感が強かった事も無い。ある意味覚悟して臨んだら意外に顔を往年のイメージで以て眺められる、経年劣化覚悟で参加した同窓会みたいに結果オーライ。
各キャラにスポットを当てたのも番外編的に悪くはなかった。アラン編、フェルゼンの妹編、アンドレ編のサイドストーリー、など。そしてスイスのヌーシャテルについて仕事柄調べたことがある自分には、時計というモチーフは興味をそそられた。
スウェーデンに舞台を移した4巻は、本編が持ってた、時代を眺め写し撮るかの雰囲気も、浸るように感じ取れた。
それにスタッフさんへの謝辞もあとがきで触れられていたが、フランスらしさや町の感じ、群衆、貴族らしさ、などそこここに、見た目楽しめる仕事ぶり、作品全般素晴らしかった。
オスカルの親世代のロマンスや、ロザリーの役目など、本編を補ったにしては独立性高い挿話も存在感高い。
何より、池田先生が情愛、殊恋愛に関しても凡人ではないことを示す、機微に入った感情描写のアピール力、体制反体制市井の人々の感情まで作品に入れ込む目配り、健在だった。全4巻。