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おすすめ鬱漫画30選|トラウマ覚悟! 苦しいけれど面白い名作を厳選

おすすめ鬱漫画30選|トラウマ覚悟! 苦しいけれど面白い名作を厳選

夢と希望に溢れた漫画も良いけれど、これでもかというほど辛い運命を疑似体験できるのが鬱漫画。追い詰められるキャラクターに気持ちを重ねてページをめくる指が止まらない。どんなにひどい結末を迎えても、お化け屋敷から出てきたような不思議な安堵感が味わえるのが漫画のいいところ。今回はそんな鬱漫画を様々な切り口で紹介! 読んだ後に余韻が残り続けるのも鬱漫画の魅力の一つ。きっと一生忘れられない物語に出会えます。

目次

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青少年の苦しみや切なさを描くジュブナイル鬱漫画4選

主人公は一見普通の青少年。けれど、彼らが直面する現実は救いようがなく絶望的。それでも前を向いて進んでいく彼らの姿に涙……。二転三転するストーリーからも目が離せないジュブナイル鬱漫画4作品をご紹介します。

タコピーの原罪

タコピーの原罪

タイザン5集英社

【あらすじ】地球にハッピーを広めるため降り立ったハッピー星人・タコピー。助けてくれた少女・しずかの笑顔を取り戻すため奔走するが、少女を取り巻く環境は壮絶。無垢なタコピーには想像がつかないものだった。ただ笑って欲しかったタコピーが犯す罪とは…!?

【作品情報】作者はタイザン5先生。集英社『少年ジャンプ+』で連載された後、コミックスは全2巻で完結しています。連載当初から、ハードで予測不能な展開によりSNSを中心に話題をさらいました。

コマサム

【おすすめするポイント】小学生のキャラクターたちと、便利なアイテムを出してくれる不思議な生き物が登場する……と少し不思議な現代ファンタジー設定の本作。衝撃的な展開に、一気に引き込まれてしまいます。大胆なコマ割りと巧みな演出にも是非ご注目。登場人物たちにはそれぞれ共感できる部分があったりと、深みのある作品に仕上がっています。計算し尽くされた伏線の数々に考察が止まらず、読むたびに新たな発見が得られるはず。何度も読み返したくなる傑作です。

おくることば

おくることば

町田とし子講談社

【あらすじ】男子高校生・佐原は通学途中、横断歩道で大型トラックに轢かれて死亡します。しかし本当は、事故ではなく同級生の千秋に突き飛ばされて殺されていたのでした。佐原は千秋がまた殺人を犯さないよう、10年前に同じ場所で亡くなった幼なじみの霊・実知と共に千秋を追いかけますが、その内に佐原は同級生達から憎まれていたことを知って……。

【作品情報】作者は『紅灯のハンタマルヤ』『交換漫画日記』などで知られる町田とし子先生。2017年から講談社『月刊少年シリウス』で連載され、コミックスは全3巻で完結しています。交通事故で死んだ主人公が、幽霊でありながら自らの死の真相を探る青春ミステリー。

【おすすめするポイント】幽霊である主人公が、自身の事故の真相を探るという異色のミステリー漫画。主人公・佐原は事故で霊になってしまったことをきっかけに、いい仲間だと思っていた同級生たちが、実は佐原に対して良く思っていなかったことを知っていきます。思春期のキャラクター達が抱える闇や黒い感情、幼馴染・千秋の場違いな笑顔などが不気味で、すべてが怪しくて先が読めない展開。後半の思いもよらない伏線回収は見事で、全3巻で完結しているのが物足りなく感じるほど。最終回を読み終えた後、前半と後半の印象がガラリと変わるはず。ぜひ何度も読み返してみてください。

最終兵器彼女

最終兵器彼女

高橋しん小学館

【あらすじ】北海道の札幌に近い田舎町に暮らす高校生・シュウジは、同じクラスのチビでドジっ子のちせから告白され、付き合うことに。ぎこちなくも清純な交際を始める二人でしたが、そんな矢先、札幌上空に戦闘機が襲来。この「札幌空襲」で敵機を撃ち落としたのは、最終兵器に改造されたちせでした。自衛隊から監視されるようになったちせの手を取り、シュウジは逃亡を試みますが、そこへ再び敵機が襲来して……。

【作品情報】作者は『いいひと。』『花と奥たん』などで知られる高橋しん先生。2000年から小学館『ビッグコミックスピリッツ』で連載され、全7巻で完結。 2002年にテレビアニメ化、2006年には実写映画化されたヒット作で、前作の『いいひと。』とは全く違った近未来SFに挑んだ衝撃作です。

【おすすめするポイント】ほのぼのとした日常生活が戦争によって破壊され、人類が破滅に向かう中、それでも恋をしていくシュウジとちせの姿が胸を打つ、切なさMAXのラブストーリー。兵器になってしまったせいで、体に触れても冷たく、心臓の音も聞こえなくなってしまったちせと、それでも彼女に触れるシュウジ……普通の幸せな未来さえ思い描けなくなった二人の関係に、胸が強く締め付けられます。破壊されていく街並みや、戦禍で亡くなっていく友人たちなど、暖かみのある絵柄とハードな内容のギャップも印象的。終わりゆく世界で精一杯生きる登場人物たちの姿が眩しく、読み終わった後、心にぽっかり穴が空いたような気持ちになるほど濃密な一作です。

光が死んだ夏

光が死んだ夏

モクモクれんKADOKAWA

【あらすじ】とある田舎に住む少年・よしきはある日、同い年の友人・光が、人間ではない不気味なナニカにすり替わっていることを確信します。本物の光は半年前に山で行方不明になり、そのまま死んでしまっていたのでした。それでも光と一緒にいたいと思っていたよしきでしたが、次第に二人の周辺に得体の知れない存在が近づくようになって……。

【作品情報】モクモクれん先生が描く本作は、2021年からKADOKAWA『ヤングエースUP』にて連載中。2022年11月25日現在、コミックスは2巻まで配信中です。『次にくるマンガ大賞2022』においてWebマンガ部門総合11位とGlobal特別賞【繁体字】を受賞するなど、今話題の青春ホラー漫画です。

【おすすめするポイント】ホラー漫画ではありつつも、よしきと光の気の置けない友人関係の緩い雰囲気や、ところどころに挟まれるコメディ要素もあり、「ホラーは苦手」という方でも読みやすいはず。 作画が非常に美しく、田舎の閉鎖的な空気や夏のうだるような暑さ、そして異形のナニカの不気味さが恐ろしいほどに伝わってきます。明朝体で描写される蝉の声や雨の音など、恐怖心を煽る独特の擬音表現にも注目。よしきがナニカの闇に触れて溶け合う場面は、おどろおどろしいながら、どこか艶めかしさも。ある日突然友人が「別のナニカ」になってしまった恐怖、田舎町に忍び寄る怪異の気配……怖いのに目が離せない、不思議な魅力に溢れた注目作です。

理不尽な展開がクセになるダークファンタジー鬱漫画4選

平凡な少年少女が、ある日突然不思議な力を得て巨悪に立ち向かう。王道設定でありながら、物語が進むうちにだんだん雲行きが怪しくなり、思いも寄らない展開へ……そんな衝撃的なダークファンタジー鬱漫画4作品をご紹介します。

チェンソーマン

チェンソーマン

藤本タツキ集英社

【あらすじ】騙され借金まみれで、貧乏な生活を送っていた少年デンジ。チェンソーの悪魔のポチタと共にデビルハンターをしながらどうにか生きていたが、ある日残虐な悪魔に狙われてしまい...!?

【作品情報】作者は『ファイアパンチ』『ルックバック』『さよなら絵梨』で知られる藤本タツキ先生。集英社『週刊少年ジャンプ』で連載された第一部がコミックス第11巻で終了し、2022年11月25日現在、第二部が『少年ジャンプ+』で連載中です。2022年10月にはテレビアニメ化もされました。最新話更新の度にSNSを賑わせる、話題沸騰の新時代ダークヒーローアクションです。

コマサム

【おすすめするポイント】借金返済のため極貧生活を送るデンジ。少年漫画の定型を打ち破るような斬新な主人公で、彼の背景やキャラクターにまず驚かされます。ミステリアスな女性・マキマとの出会いからデンジの運命は大きく変わり始めます。魅力的な登場人物に加え、巧妙な伏線回収と、激しいバイオレンスアクションが衝撃的。恐ろしくもどこか美しい悪魔たちのデザインも見どころです。

ぼくらの

ぼくらの

鬼頭莫宏小学館

【あらすじ】夏休みの自然学校に参加した15人の少年少女は、海岸で見つけた洞窟で、謎の青年・ココペリと出会います。彼は15人を「巨大ロボに乗って地球を襲う敵と戦う」という内容のゲームへ誘い、少年達はその誘いに乗りますが、それはテレビゲームではなく現実世界における戦いでした。巨大ロボット・ジアースを前に興奮する少年達でしたが、そこには残酷なルールがあって……。

【作品情報】作者は『なるたる』『のりりん』などで知られる鬼頭莫宏先生。2004年から小学館『月刊IKKI』で連載され、コミックスは全11巻で完結。2007年にはテレビアニメ化され、小説版も刊行されたSFバトルアクション漫画です。2010年には第14回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞しています。

【おすすめするポイント】思春期の少年少女が巨大ロボットを操って敵と戦う、アツいSFバトルアクション……と思った方は閲覧注意です。戦闘一回につき操縦者が一人死ぬという残酷な設定で、彼らを取り巻く状況や普段の何気ない様子を描きながらも、最後には死が待っている救いのない展開。ですが、命を落とすと分かっているがゆえの勇気や葛藤も描かれ、それぞれにドラマがあり、絶望的なバッドエンドとは言い切れません。敵の正体やロボットの造形などの設定も非常によくできていて、SFやロボットアクションが好きな方も満足いただけるはず。文字通り命を懸けて戦う少年達の姿に、絶望だけではない深いテーマを感じる一作です。

なるたる

なるたる

鬼頭莫宏講談社

【あらすじ】主人公・シイナは小学生最後の夏休みに、祖父母が住む島の海岸で、星型の謎の生物「ホシ丸」と出会います。ホシ丸の正体は、変幻自在の能力を持ち、少年少女の意識とリンクする「竜の子」。それ以来、ほかの「竜の子」たちとリンクする少年少女がシイナの前に次々と現れます。「竜の子」の能力を使い、世界をリセットすることを目論む者と、存続させようとする者で対立する少年少女たち。シイナは避けることのできない戦いに巻き込まれてゆき……。

【作品情報】作者は『ぼくらの』の鬼頭莫宏先生。1998年から講談社『月刊アフタヌーン』にて連載され、コミックスは全12巻で完結。2003年にはテレビアニメ化されました。SF漫画の形をとりながら、人間の暗黒面を描いた、作者の出世作です。

【おすすめするポイント】不思議な生き物「竜の子」と、それに関わる人間たちを描く、地球規模の冒険アクション。タイトルの『なるたる』は、「骸(むくろ)なる星 球(たま)たる子」の意味です。思春期の不安定な心を象徴するかのような、手足の長い華奢な絵柄が特徴的。細い身体の少年少女たちの脆く危うい雰囲気と、それに不釣り合いな性描写や凄惨な暴力表現が強烈な印象を残します。地球の破壊と再生を描く壮大な物語で、暗く救いのないエピソードや目を背けたくなるシーンもありますが、主人公・シイナの明るくて強い性格が物語の中心をしっかりと支えていて、どこか爽やかな読後感を味わえるはず。

ヒロインは絶望しました。

ヒロインは絶望しました。

千田大輔講談社

【あらすじ】女子高生・明は、謎のコンパクトの力で異世界へ転送され、巨大な熊に殺されては現実世界で生き返るという日々を二か月ほど繰り返していました。ある日、同級生の男子・秋葉から、そのコンパクトは人気カードゲーム「ドレ☆スタ」のアイテムだと知らされます。秋葉の協力で熊を倒すことができた明は、それを機にゲームが終わるまで彼に協力してもらうことに。しかし、協力の報酬として、ゲームを攻略するたびに秋葉からの理不尽な要求に応えることになって……。

【作品情報】作者は『異常者の愛』『僕は君たちを支配する』『マコさんは死んでも自立しない』などで知られる千田大輔先生。2019年から講談社『マガジンポケット』で連載され、コミックスは全10巻で完結しています。とある女子高生に訪れた、命と尊厳を引き換えにした恥辱の日々を描くサスペンスアクション漫画。

【おすすめするポイント】助けてくれた相手が良い人ではなかったせいで、ゲームの世界と現実世界、どちらの世界でも地獄を味わうことになるヒロイン・明が不憫すぎる物語。味方であるはずの秋葉の性格が胸糞悪く、賛否が分かれる問題作です。頭身が低めのかわいらしい絵柄で、世界観は女児向けの変身アクションアニメのようなのに、秋葉が明や対戦相手に行うパワハラ・セクハラはかなり陰険で凄惨なのでご注意を。人間を駒のように扱う秋葉にいら立つ場面も多いですが、彼の的確な戦略やゲームのトップランカーである腕前は本物。予測不能なバトルアクションは必見です。

人間の心の闇を描いた鬱漫画5選

現代社会を舞台に、人間の奥底に潜んだ暗黒面をえぐり出す物語。さまざまな角度から、キャラクターの内面を深掘りしていきます。共感したら最後、ズルズルと物語に引き込まれてしまう……一度読めば抜け出せなくなる鬱漫画5作品です。

おやすみプンプン

おやすみプンプン

浅野いにお小学館

【あらすじ】小学5年生の主人公・プンプンは、転校生の愛子に一目ぼれしてしまいます。彼女から「もうすぐ地球は人の住めない星になる」という話を聞き、「将来の夢」という作文の宿題に、「宇宙を研究する人になって人類を宇宙に移住させる」と書こうと思い立ったプンプン。ですが翌朝、プンプンの家でとんでもないことが起きて……。

【作品情報】作者は『ソラニン』『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』『うみべの女の子』などで知られる浅野いにお先生。2007年から小学館『週刊ヤングサンデー』で連載開始し、『ビッグコミックスピリッツ』に引き継がれ、コミックスは全13巻で完結しています。第13回文化庁メディア芸術祭マンガ部門の審査員委員会推薦作品に選出されました。

【おすすめするポイント】主人公・プンプンの、波乱に満ちながらも小学生から大人へと成長していく半生を描いた一作。リアルでどこにでもありそうな背景や登場人物たちの中、超シンプルな線で描かれるヒヨコのようなプンプンとその家族ですが、あえてシンプルに描かれたことで自由にプンプンたちの姿を想像できるところが素晴らしいです。鬱屈を抱えながら、上手くいかない現実と必死に戦うプンプンの姿に、どこか共感を覚えてしまうはず。人間の醜い部分を素直に描き出し、モヤモヤと暗い部分もありますが、なぜか爽やかさも感じられる作品です。

惡の華

惡の華

押見修造講談社

【あらすじ】中学生の主人公・高男はある日の放課後、憧れの美少女で同級生である奈々子の体操服を、出来心で家に持ち帰ってしまいます。その様子を見ていたのは、教師を「クソムシ」呼ばわりする変わり者の女子・佐和。弱みを握った佐和に"契約"を持ちかけられ、無茶な要求に翻弄される高男でしたが、ひょんなことから奈々子と交際することになり……。

【作品情報】作者は『血の轍』『おかえりアリス』などで知られる押見修造先生。2009年から講談社『別冊少年マガジン』に連載され、コミックスは全11巻で完結しています。2013年にはアニメ化、2019年には実写映画化もされました。思春期特有の移ろいやすい気持ちと、残酷ながらも繊細な心を描いた押見修造先生の代表作です。

【おすすめするポイント】中学生ながらにボードレールの詩集を読み、鬱屈としながらも自意識過剰な高男。常に毒舌で協調性のない問題児・佐和。美少女で優等生でありながらも、そんな自分に漠然と虚しさを感じている奈々子。三人の張り詰めた心が弾けたとき、待っているのは破滅か、希望か……。中学生から高校生、そして大人になるまでの思春期の繊細な心の動きをとらえ、主人公たちが現実社会の閉塞感の中で必死にもがき生きてゆく様を描いた問題作です。重厚な文学作品のような読み応えを、是非味わってみてください。

少年のアビス

少年のアビス

峰浪りょう集英社

【あらすじ】田舎町に住む高校生・令児は、看護助手の母、引きこもりの兄、認知症の祖母と4人暮らし。母を助けるために進学を諦め、地元に縛られ続けることを受け入れていた令児でしたが、ある日、憧れのアイドル・ナギが地元のコンビニで働いているところに遭遇します。ナギに地元の案内を頼まれた令児は彼女を自転車に乗せて町を走りますが、ある小説で心中場所として描かれた場所の近くに来たとき、ナギが令児に提案したのは……。

【作品情報】作者は『ヒメゴト~十九歳の制服~』『初恋ゾンビ』などで知られる峰浪りょう先生。2020年から集英社『週刊ヤングジャンプ』で連載中で、コミックスは第10巻(2022年11月25日現在)まで配信中。2022年9月にはドラマ化もされました。閉塞感ばかりの田舎町で生きる少年達の薄暗い希望と人生を描いた、"今"を映し出すワールドエンド・ボーイミーツガール。

【おすすめするポイント】地方の閉鎖的な田舎町で、町に縛られ続ける人々を描く群像劇。心の底では助けを望みながら、町で生きることを受け入れる主人公・令児でしたが、憧れのアイドル・ナギとの出会いで世界が変わってゆきます。幼なじみ、教師、そして家族など、令児を取り巻く人々もそれぞれ闇を抱えていて、彼らが深淵を覗くように自らの心の内を吐き出す見開きページは必見。ダークな心理描写が冴え渡り、行き場のない感情の描き方がとにかく秀逸です。もつれた人間関係の先にどんな終幕が待っているのか……恐ろしいのに覗かずにいられない、まさに深淵(アビス)のような作品です。

先生の白い噓

先生の白い噓

鳥飼茜講談社

【あらすじ】主人公・美鈴は、黒髪に眼鏡で地味な格好をした24歳の国語教師。周囲からは男性経験のない堅物だと思われていますが、人に言えない秘密を抱えています。それは、親友の婚約者・早藤に襲われ、その後も局部写真をネタに関係を強要されていること。一方、美鈴の教え子・新妻は、人妻に襲われたことで悩んでいました。新妻はそのことを美鈴に打ち明け、その後美鈴を慕うようになりますが、あるきっかけで彼女が誰かに脅されていると気付いて……。

【作品情報】作者は『おはようおかえり』『おんなのいえ』『地獄のガールフレンド』などで知られる鳥飼茜先生。2013年から講談社『月刊モーニング・ツー』で連載され、コミックスは全8巻で完結しています。性暴力の問題に真正面から向き合い、男と女の間の「性の不平等」を描いた先駆的な作品です。

【おすすめするポイント】性によって傷ついた人々を真っ直ぐに捉え、真摯に描き出すヒューマンドラマ。リアルな心理描写が光り、時には目を背けたくなるほど辛く苦しい場面や、逃げ出したいほど恐ろしい描写もあり、心が引き裂かれそうになります。主人公・美鈴は親友の婚約者である早藤に無理矢理処女を奪われ、脅迫によって関係を続けながらも時には快感を得てしまい、女である自分を憎んでいました。被害を誰にも打ち明けられず、心の闇が膨らんでゆく美鈴でしたが、教え子である新妻との関わりによって、少しずつ前に踏み出してゆきます。葛藤を乗り越え、トラウマと対峙する美鈴の姿に勇気をもらえる一作です。新妻との禁じられた恋の行方にも是非ご注目を。

脂肪と言う名の服を着て[完全版]

脂肪と言う名の服を着て[完全版]

安野モヨコ祥伝社

【あらすじ】肥満気味の主人公・のこは、「食べていれば何も考えなくて済む」と考え、ストレスを紛らわせるために食べ過ぎてまた太る、という悪循環を繰り返しています。ある日同僚のマユミに、自分の恋人・斉藤が寝取られたことに気付き、やけになったのこ。テレクラで知り合った老人から貰った大金を使って、高額の痩身プログラムに入会します。「痩せて綺麗になれば今より幸せになれる」と考えたのこでしたが……。

【作品情報】作者は『ハッピー・マニア』『働きマン』『シュガシュガルーン』などで知られる安野モヨコ先生。1996年から主婦と生活社『週刊女性』に「やせなきゃダメ!」のタイトルで連載され、単行本化の際に改題されました。紙書籍版は全1巻、電子書籍版は上下巻の全2巻で完結しています。過激なダイエットを描き、世の女性たちに衝撃を与えました。

【おすすめするポイント】誰もがきっと共感できる、外見の悩みと葛藤を描いた作品。太っていることで見下されながらも、食べることで現実逃避していたのこでしたが、「痩せれば幸せになれる」と信じて過激なダイエットにのめりこんでいきます。過食嘔吐によって痩せてゆくのこでしたが、周囲の反応は思っていたものとは違い、太っていた頃よりも悪化してしまう辛い展開。痩せていることが本当に幸せなのか……ダイエットについて深く考えさせられます。ついつい食べ過ぎてしまう気持ち、痩せることへの執念など、心理描写が繊細で、思わず感情移入してしまうはず。

親との確執を描いたトラウマ鬱漫画4選

切っても切れない親子の関係。繋がりが深い分、ひとたび憎しみを覚えれば全てが憎らしく思えてくるもの。毒親との争いや葛藤をドキュメンタリータッチで綴る作品や、半自伝的な作品、サイコサスペンスなど、様々なテイストで描かれた4作品をご紹介します。

血の轍

血の轍

押見修造小学館

【あらすじ】中学生の主人公・静一は、従兄弟のしげるに「過保護」とからかわれるほど母・静子とべったりでしたが、夏のある日、親戚一同で出かけた山で静子がしげるに対して"ある事件"を起こしてしまいます。それをきっかけに家族関係は激変。静一は心身ともに消耗し、静子は徐々に恐ろしい二面性を見せ始めて……。

【作品情報】作者は『惡の華』『ハピネス』など人間心理の闇を巧みに描く鬼才・押見修造先生。2017年から小学館『ビッグコミックスペリオール』で連載中で、コミックスは第14巻(2022年11月25日現在)まで配信中の、毒親との愛憎を描くサイコサスペンス漫画です。

コマサム

【おすすめするポイント】自分にべったりだった母が起こした事件をきっかけに、毎週遊ぶほど仲良しだった従兄弟や自分に好意を寄せてくれた女子など、周囲の人々との関係が取り返しのつかないほどに変わってしまう……。主人公・静一の人生が、母・静子によって支配され、壊れてゆく様を克明に描き出していて、のめり込むように続きを読んでしまう一作。巻を追うごとに静子の心理も少しずつ見えてきて、彼女の孤独や辛さに共感する部分もあり、一言で毒親と言い切れないところも興味深いです。リアリティーのある画風で、人間味溢れる表情にもご注目。繊細なペンタッチが、揺れ動く静一の心理を丁寧に表現しています。極限まで削ぎ落されたセリフと、それを補う画力と演出力は必見です。

「子供を殺してください」という親たち

「子供を殺してください」という親たち

鈴木マサカズ / 押川剛新潮社

【あらすじ】主人公・押川は、民間団体「トキワ精神保健事務所」の所長。うつ病や統合失調症などの精神疾患を抱えながらも適切な対応が取られていない人々を、親からの依頼で説得し、医療施設へ橋渡ししています。押川に依頼する親の大半が口にする言葉は、「自分では手に負えないから、子供を殺してくれ」。様々な親子のエピソードを通して、現代家庭の闇をえぐり出していきます。

【作品情報】作画は『マトリズム』『ケーキの切れない非行少年たち』などで知られる鈴木マサカズ先生。原作は同名ノンフィクションの著者であり、主人公のモデルでもある押川剛先生。2017年より新潮社『月刊コミックパンチ』で連載中で、コミックスは第12巻(2022年11月25日現在)まで配信中。様々なメディアで取り上げられた衝撃と迫真のドキュメンタリーです。

【おすすめするポイント】原作著者が実際に目にしてきた、精神疾患を抱えた人々とその親たちを中心に描く、闇を抱えた現代家庭のリアル。時系列の入れ替えなど細部の変更はあるとのことですが、それでも衝撃的な内容です。家庭内暴力や引きこもり、アルコール依存症など、精神疾患により様々な問題を起こし親にさえ見放された子供たち……ですがその原因には、家族や社会の問題が深く関わっています。同じ精神疾患でも原因や症状は様々で、一件とて同じケースはありません。鈴木マサカズ先生が描く細い目のリアルな人物たちと、シンプルかつ迫力ある画面づくりによって、身近に起こりうる、もしくは既に起きているかもしれないエピソードたちをじっくり読ませてくれます。

お父さんが早く死にますように。

お父さんが早く死にますように。

裏海マユファンギルド

【あらすじ】主人公・あすかは、幼い頃から実の父によって激しい暴力と性的虐待を受けていました。母はそれを知って家を出ていき、それ以来、父の暴力・暴言・性行為の強要は更にエスカレート。警察に相談しても、彼らは有名企業の社長である父を信じるばかりでした。それでもあすかが性暴力に耐えるのは、父から妹・蛍を守るため。いつか蛍と二人で安心して暮らすことを夢見るあすかでしたが、父はついに蛍にまで手を出そうとして……。

【作品情報】作者は裏海マユ先生。2021年から電子コミックレーベルの『コミックアウル』にて連載中で、分冊版は17巻(2022年11月25日現在)まで配信中です。実の父親からのDVや性暴力などの家庭問題を描くサスペンス漫画です。

【おすすめするポイント】身内も警察も信用できない世界の中で、主人公・あすかにとっては姉妹の絆だけが確かなものでした。しかし、その絆が裏目に出て新たな悲劇を生むことに……。光が差したと思えばまた闇がやってくる、「これぞ鬱展開」という状況が続きます。姉妹の運命はどうなってしまうのか、父はなぜあすかを虐待するのか……今後の展開から目が離せない一作です。

愛と呪い

愛と呪い

ふみふみこ新潮社

【あらすじ】1990年代、関西地方に住む愛子は新興宗教の2世として生まれ、団体が運営する学校に通っていました。実父は愛子を性的に虐待していますが、他の家族はそれを見て笑うだけ。唯一の救いは、同級生で震災のとき弟の死に直面した無神論者の松本さん。教祖も信者も殺すと宣言する松本さんでしたが、ある事件を機に、すっかり別人に……。絶望した愛子はどのように孤独を生き延びたのか。「キレる17歳」世代の半自伝的サバイバルストーリー。

【作品情報】作者は『女の穴』『ぼくらのへんたい』などで知られるふみふみこ先生。2017年から新潮社『yom yom』で連載され、全3巻で完結しています。実父からの性的虐待や宗教問題など、家族によってかけられた呪いから解放されるまでを描いた半自伝的ヒューマンドラマ。

【おすすめするポイント】父から性的虐待を受け、それによって生きづらさを抱えた女性が、"呪い"と向き合って乗り越えてゆく物語です。SNSどころか、インターネットも殆ど浸透していなかった1990年代後半。阪神・淡路大震災、オウム真理教、酒鬼薔薇事件などの終末感漂う出来事が起き、誰もが閉塞感を感じていた時代の空気がひしひしと伝わってきます。そんな時代に、閉鎖的な地方の田舎町で、味方が誰もいない主人公・愛子が感じていた絶望感や孤独感は計り知れません。彼女がどのようにトラウマと向き合い、乗り越え、生き延びたのか……さらりと描かれているのに鬼気迫る内容で、辛いのに読む手を止められない一作。愛子の成長に合わせて、絵柄がふんわりしたものからリアルなタッチに変化していく点もご注目ください。

残虐な描写を真正面から描くサスペンス系鬱漫画6選

飛び出す内臓、切り刻まれる体、焼け焦げる肉……映画やドラマでは規制がかかってしまう残酷描写を、ごまかすことなく表現できるのが漫画のいいところ。惨い表現と、真正面から描かれた人間の心理が印象的な、サスペンス系鬱漫画6作品をご紹介します。

ギフト±

ギフト±

ナガテユカ日本文芸社

【あらすじ】主人公・環は一見ギャル風の華奢な女子高生ですが、実は人狩りのプロ。更生を期待できない犯罪者たちを人知れず狩り、相棒のタカシと共に地下社会の臓器売買グループで暗躍しています。環たちを巡って起きる事件には、JKビジネスや中国マフィアなどあらゆるタブーが絡み合い、やがてそれらは一つの真実に繋がることに……。

【作品情報】作者はナガテユカ先生。2015年より日本文芸社『週刊漫画ゴラク』で連載され、コミックスは全26巻で完結しています。2022年8月時点で累計部数370万部を突破した、大ヒット臓器売買ミステリー漫画です。

コマサム

【おすすめするポイント】日本の裏社会を劇画調の画風で描き出す本作。女子高生でありながら、狩りも解体もプロフェッショナルな環の手腕は、グロいはずなのに格好良くて魅力的です。「命をありがとう」と声をかけながら臓器を取り出してゆく様子に、グッと心を掴まれるはず。惜しみない暴力描写やダークな画面作りが物語にリアリティーを与えていて、どっぷりとした没入感に浸れます。臓器売買を巡って警察や中国マフィアなど様々な勢力が絡み合い、やがて大きなうねりを生み出してゆく重厚な展開からも目が離せません。

adabana 徒花

adabana 徒花

NON集英社

【あらすじ】とある雪深い町で見つかった左手首。それは女子高生・真子のものでした。真子を殺したと言って警察に自首してきたのは、彼女の同級生の美月。「真子の叔父も殺した」と犯行を供述する美月でしたが、そこには違和感があり……。真子を死に追いやった真犯人は一体誰なのか、真子と深い絆で結ばれていた美月が自首した目的とは……闇に抗う2人の少女の"秘密"をめぐる、リアル・サスペンス!!

【作品情報】作者は『ハレ婚。』『デリバリーシンデレラ』などで知られるNON先生。2020年から集英社『グランドジャンプ』で連載され、コミックスは上中下巻の全3巻で完結しています。雪深い田舎町で起きた殺人事件を巡る、ハードで切ないサスペンス漫画です。

【おすすめするポイント】真っ白な雪と真っ赤な血のコントラスト、雪の中から出てくる真子の遺体、厨房で叔父を殺害する場面。どれも残虐で目に焼き付いて離れないようなシーンなのに、同時に美しさを伴っているのは、NON先生の類いまれなる画力のなせる業。ストーリーも全3巻と一気読みしやすいボリュームなのに、ドラマを1クール観終わったあとのような満足感を味わえます。若く未来あるはずの少女たちに起こった悲劇、絶望、その先に待っていた運命……そして美月と真子の切なくも固い友情に、きっと涙してしまうはず。真子のために、人生をかけて行動する美月の姿が強かで美しいです。

僕たちがやりました

僕たちがやりました

金城宗幸 / 荒木光講談社

【あらすじ】高校2年生の主人公・トビオは、仲間のマルや伊佐美と共に、OBで金持ちの小坂先輩の金をあてにして自堕落な生活を送っていました。ある日、ヤンキーが集まる別の高校のグループからマルが暴行された仕返しに、トビオたちは彼らの校舎にプラスチック爆弾を仕掛けます。いたずら程度のつもりでしたが、爆発が近くのプロパンガスに誘爆して大惨事になり……。

【作品情報】原作は『神さまの言うとおり』『ブルーロック』の金城宗幸先生、作画は『ヤンキー塾へ行く』『レイジング・ヘル』の荒木光先生。2015年から講談社『週刊ヤングマガジン』で連載され、全9巻で完結しています。2017年には窪田正孝さん主演でテレビドラマ化もされた人気作です。

【おすすめするポイント】なんでもない日常が、想定外の事件によって激変。凶悪事件の容疑者となったトビオたちは各々逃走を始めますが、犯した罪の重さに耐えきれないトビオがとった行動は……。罪を背負った若者たちの行動と心理を、リアリティー溢れる作画で繊細に描く一作。犯した罪から逃げるということがどれほどの苦しさなのかがひしひし伝わって、思わず辛くなってしまうはず。一難去ってまた一難という展開が続き、テンポよくグイグイ読ませてくれます。息つく暇もなく、ラストまで一気読みしてしまうこと間違いなし!

ミュージアム

ミュージアム

巴亮介講談社

【あらすじ】主人公の刑事・沢村は、ある奇妙な連続殺人事件を受け持つことに。被害者はいずれも自らの罪になぞらえて、拷問の上に惨殺されていました。捜査が進むうちに、被害者たちにはある共通点が判明。数日前に息子を連れて家出した沢村の妻も、その共通点を持つ一人で……。

【作品情報】作者は巴亮介先生。2013年より講談社『週刊ヤングマガジン』で連載され、コミックスは全3巻で完結しています。2016年に大友啓史監督、小栗旬さん主演で映画化もされました。戦慄の連続猟奇殺人犯を追うサスペンスホラーです。

【おすすめするポイント】息を忘れるほどの緊迫感、一気読み必至の作品です。カエルのマスクをつけてレインコートで身を隠す猟奇殺人鬼・カエル男にとって、殺人は芸術で、死体は作品。自身をアーティストと称し、非道で残虐な犯行を繰り返しています。飼い犬を殺処分した女性を犬に噛み殺させるなど、グロテスクでおぞましい殺人方法は寒気がするほどの恐怖感。終始重苦しくハラハラする展開で、手に汗握りながらページをめくってしまうはず。ジリジリと追いつめられるような緊張感を、ぜひ味わってみてください。

ミスミソウ 完全版

ミスミソウ 完全版

押切蓮介双葉社

【あらすじ】主人公・春花は父親の仕事の都合で、東京から雪国の片田舎・大津馬に引っ越してきます。ですが転校生という理由だけで、同級生・小黒が率いるグループから壮絶なイジメを受けることに。担任教師も見て見ぬふりで、味方はクラスの男子・相場だけ。小黒は相場の春花への態度に嫉妬して、イジメをさらにエスカレートさせていきます。春花は自宅に火をつけられ、両親は焼死、妹・祥子は全身に大やけどを負う重症。春花はイジメグループへの憎しみを爆発させ、凄惨な復讐劇を始めます……。

【作品情報】作者は『でろでろ』『ハイスコアガール』など、ホラー・ギャグ漫画を中心に多彩な作風で知られる押切蓮介先生。本作は著者はじめての怪異が出てこないサイコホラー漫画です。2007年から2009年にかけて『ホラーM』で連載された後、加筆修正を加えた『ミスミソウ 完全版』が双葉社より刊行され、完全版の紙書籍版は全2巻、電子書籍版は全6巻で完結しています。2018年には山田杏奈さん主演で実写映画化もされました。

【おすすめするポイント】少年少女の救いのない殺し合いを描いたサイコホラー。ストーリー自体も衝撃的ですが、「いきなり白紙の原稿にペン入れをする」という独特な画法によって生み出される不思議な迫力が、作品に凄みを増しています。ホラー漫画風の線で描かれる、凄惨でグロテスクな暴力描写はトラウマ必至。クラスメイト、担任教師をはじめ、春花の家族以外はほぼ全員が人間のクズという閉鎖的な環境の中、命をかけて復讐に挑む春花の姿は気高く、そしてどこか儚く印象に残ります。

美醜の大地~復讐のために顔を捨てた女~

美醜の大地~復讐のために顔を捨てた女~

藤森治見ぶんか社

【あらすじ】昭和20年、太平洋戦争末期。樺太にある女学校に通う主人公・ハナは、貧しい生まれと醜い容姿のために、大会社の令嬢・絢子率いるグループから壮絶なイジメを受けます。絢子たちの陰謀で退学させられた上、一家を皆殺しにされたハナは復讐を決意。美容整形によって美しい顔に変身し、かつて自分を陥れた同級生たちに正体を隠し接近して、一人、また一人と復讐を遂げていきますが……。

【作品情報】作者は『緋い初夜~家畜同然に売られた女の復讐~』などで知られる藤森治見先生。2016年からぶんか社『まんがグリム童話』で連載中で、コミックスは紙書籍版が第5巻、電子書籍版が第18巻(2022年11月25日現在)まで配信中です。2021年にはアプリゲーム化、2022年にはYouTubeチャンネル『禁断書店』で動画化もされた、イジメによって全てを奪われた女性による復讐劇です。

【おすすめするポイント】強く芯の通った女性が、人生をかけて行う壮絶な復讐を描いた物語。醜い容姿を理由にいじめられていた女性・ハナの復讐は、相手を自分と同じ目に遭わせる情け容赦ない凄惨なもの。かつての同級生たちを追い詰め、次々と破滅へ追い込んでいきます。しかし、もともと家族思いで苦労人であるハナは、自分と同じ不幸な境遇の者には非情になり切れないことも……復讐と人情の間で葛藤する人間らしさも描かれていて、ストーリーに深みを与えています。復讐が連鎖していったり、ハナと同じ相手に恨みを持つ協力者が現れたりと、全く飽きることのない予測不能な展開が続き、どんどん先を読みたくなる面白さ。登場人物それぞれにドラマがある、哀しくて美しい復讐劇です。

サイコパスで狂った登場人物が魅力の鬱漫画4選

学校や職場などを舞台に、ありふれた生活を送る登場人物達。ところが、狂気を秘めたサイコパスによって、平穏な日常が少しずつ壊れてゆく……。恐ろしさの中に、そこはかとないユーモアも秘めた4作品をご紹介します。

青野くんに触りたいから死にたい

青野くんに触りたいから死にたい

椎名うみ講談社

【あらすじ】主人公・優里は、隣のクラスの青野くんに告白して交際が始まったものの、彼は2週間後に事故で亡くなってしまいます。青野くんの後を追おうと手首を切りかけた優里でしたが、そこへ現れたのは幽霊になった青野くん。優里は幽霊の青野くんと恋人関係を続けることにするのでした。そんなある日、優里は青野くんが自身の体に憑依できるか試すことを提案。それをきっかけに、青野くんの別人格・黒青野くんが現れ、周囲の人間にも憑依しようとするようになり……。

【作品情報】作者は椎名うみ先生で、本作が初の連載作です。2017年より講談社『月刊アフタヌーン』で連載中で、コミックスは第9巻(2022年11月25日現在)まで配信中。2022年にはドラマ化もされています。幽霊と人間という絶対に触れ合えない二人の、一途すぎる純愛ホラーラブストーリーです。

コマサム

【おすすめするポイント】生きている優里と、死んでしまった青野くん。住む世界が違う二人の、狂おしいほど激しくて、眠れないほど恐ろしいホラーラブです。黒青野くんの得体の知れない怖さはもちろんですが、青野くんを好き過ぎすぎる優里の行動も、純愛を超えて時折狂気すら感じるほど。ひたすら幽霊の青野くんのことを想い続ける優里でしたが、黒青野くんが青野くんの友人・藤本くんに憑依した際に、同級生に大怪我を負わせる事件が発生。それをきっかけに、優里のクラスメイト・堀江さんも巻き込んで、青野くんが成仏できるよう行動し始めますが……。あまりに切ない決断と優里の恋心、そして身の毛もよだつホラー描写に感情が揺さぶられっぱなしです。この恋の行方を、どうか結末まで見守ってください!

ホームルーム

ホームルーム

千代講談社

【あらすじ】生徒から好かれる人気者の高校教師・愛田は、日々何者かから嫌がらせを受けている生徒・幸子を親身に助けています。しかし、それは表向きで、イタズラを仕掛けていたのは愛田当人。自作自演で幸子の心を掴んでおいて、夜な夜な幸子の寝室に忍び込む変態教師でした。そんなある日、愛田以外に幸子に嫌がらせを仕掛ける存在が現れて……。

【作品情報】作者は千代先生。2018年から『コミックDAYS』で連載され、コミックスは全8巻で完結。2020年には山田裕貴さん主演でテレビドラマ化されました。教え子を助けるふりをしてストーカー行為を繰り返す変態教師と、そんな彼を密かに愛する女生徒の、愛する者、愛される者、両方がサイコなラブストーリー。

【おすすめするポイント】表の顔は生徒思いの人気教師でありながら、裏では教え子・幸子の部屋に全裸で忍び込む真性のド変態教師・愛田。彼のサイコっぷりは突き抜けていて、爽やかさすら感じるほど。しかし、回を重ねるごとに明らかになる幸子の思惑や、ほかの生徒や教師たちとの関係がもつれ、恋愛感情が入り乱れてカオス状態に……。変態教師と真面目な女生徒の恋にどんな結末が待っているのか、是非見届けていただきたい一作。メインキャラクターがサイコパス同士でサスペンス要素はありつつも、ポップな絵柄でコミカルな雰囲気が強く、本特集の中では比較的楽しく読める作品です。

ハッピーシュガーライフ

ハッピーシュガーライフ

鍵空とみやきスクウェア・エニックス

【あらすじ】女子高生・さとうは愛を知らず男遊びにふける日々を送っていましたが、いたいけな少女・しおと出会ったことで、本当の愛を知ります。しおと一緒に暮らし、彼女に外に出ないよう言いつけて、アルバイトに励むさとう。この生活を守るためなら何をしても許されると信じ、邪魔者を徹底的に排除するため、騙しても、犯しても、奪っても、殺しても、しおとの甘くて幸せな「ハッピーシュガーライフ」を続けようとしますが……。

【作品情報】作者は『カミヨメ』『恋愛自壊人形 恋するサーティン』などで知られる鍵空とみやき先生。2015年からスクウェア・エニックス『月刊ガンガンJOKER』で連載され、コミックスは全11巻で完結。2018年にテレビアニメ化もされた、戦慄の純愛サイコホラーです。

【おすすめするポイント】少女同士の純愛を描く百合漫画ですが、邪魔者を排除するためなら何をしてもいいと考えている主人公・さとうの常軌を逸した行動により、常に不穏な雰囲気が付きまとう本作。少女漫画のようなキラキラした華やかでかわいい絵柄と、サイコな設定やストーリーとのギャップが、異常性をより際立たせています。しおだけに深く愛情を注ぎ、彼女との生活を邪魔する人間には冷酷非情なさとうは、この生活を守り抜くことができるのか。彼女たちに待っているのは幸福か、破滅か……。さとうだけでなく、闇を抱えた周囲のキャラクターの動向にもご注目。ハラハラドキドキの愛の行方を是非見届けてください。

ヒメアノ~ル

ヒメアノ~ル

古谷実講談社

【あらすじ】清掃会社で働く岡田は、冴えない25歳童貞。何もない日々に漠然と不安を感じ、同じ職場の更に冴えない先輩・安藤(31歳童貞)に相談します。同じモヤモヤを共有できると思いきや、安藤はカフェの店員・ユカに片思いする日々を送っており、その恋をお手伝いする羽目に。ところが、ユカは岡田のことが好きらしく……!? 一方その頃、岡田の高校時代の同級生で生まれながらのサイコパス・森田は、人を絞め殺して性的快感を味わうために、密かにユカを狙っていて……。

【作品情報】作者は『行け!稲中卓球部』『ヒミズ』などで知られる古谷実先生。2008年より講談社『週刊ヤングマガジン』で連載され、全6巻で完結。2016年には実写映画化もされました。平凡な二人の青年の恋と、一人の殺人鬼の不気味な暗躍を並行して描いた傑作です。

【おすすめするポイント】岡田と安藤のうだつの上がらない平凡な日常と恋。森田のサイコキラーとしての日々。交わることのなさそうな二つのストーリーが交差して描かれ、読み進める内に、「自分も森田のような人間になっていたかもしれない」と思わされる巧みな構成に脱帽です。快楽殺人鬼に生まれてしまった森田の行動は、決して許されるものではありませんが、彼の悲哀に寄り添うような心の描き方は見事。なんでもない日常の中で、たまたま平凡だった岡田と安藤がいて、たまたまサイコキラーだった森田がいた……「漫画の世界だけ」と言い切れなくなる、怖いけれど少し哀しい余韻を残してくれる一作です。

グロテスクで異色な世界観の鬱漫画3選

常識が通用しない非日常な環境は、秘められた人間の欲望が剥き出しになる、弱肉強食・残虐非道がまかり通る世界。浮世離れした世界を、圧倒的筆力で描き切った鬱漫画3作品をご紹介します。

ブラッドハーレーの馬車

ブラッドハーレーの馬車

沙村広明太田出版

【あらすじ】とある国の孤児院で暮らす孤児の少女たちにとって、貴族院議員であるブラッドハーレー公爵の養女になることは憧れでした。養女になると「ブラッドハーレー聖公女歌劇団」に入団でき、スポットライトを浴びることができるからです。孤児たちは養女に選ばれた少女を羨望のまなざしで見送りますが、送り込まれた場所は地獄の刑務所。養女は大勢の服役者の慰み者として身体を弄ばれ……。

【作品情報】作者は『無限の住人』『波よ聞いてくれ』などで知られる沙村広明先生。2005年から太田出版『マンガ・エロティクス・エフ』で連載され、コミックスは全1巻で完結しています。近代ヨーロッパ風の世界を舞台に、ブラッドハーレー家の養女となった少女たちの過酷な運命を描いた連作短編集です。

【おすすめするポイント】作者が「赤毛のアンのような漫画を描きたい」と編集長に宣言したことで始まった本作。背景や風俗、登場人物の名前などはアンの世界を彷彿とさせますが、養女になって幸せを掴んだアンの物語とは対照的に、悲惨な運命に飲み込まれてゆく少女たちの物語を、様々な人物の視点から描いています。全く希望がなく、終始暗い雰囲気がまとわりつく短編集ですが、一コマ一コマが絵画のように美しく、短編それぞれが少しずつ関わりを持っていて、完成度の高い作品です。

ドラゴンヘッド

ドラゴンヘッド

望月峯太郎講談社

【あらすじ】東京の中学生・テルは、修学旅行の帰りの新幹線の中で大地震に遭遇します。崩落したトンネルの中で生き残ったのは、テルと同級生のノブオとアコだけ。出入り口は崩壊し、完全に外の世界から遮断されたトンネル内。テルたちは救助に望みをかけ、この状況を生き延びようと模索しますが、クラスでイジメを受けていたノブオは、徐々に狂気に囚われて……。

【作品情報】作者は『バタアシ金魚』『鮫肌男と桃尻女』などで知られる望月峯太郎先生。1994年より講談社『週刊ヤングマガジン』で連載され、コミックスは全10巻で完結。1997年に第21回講談社漫画賞を受賞しています。2003年には妻夫木聡さん主演で映画化もされました。大災害で荒廃した世界を舞台に、極限状態に追い込まれた少年達の苦悩や狂気、そして人間の本質を描く世紀末サバイバル巨編です。

【おすすめするポイント】阪神・淡路大震災の前年に連載が開始された本作は、大地震を予見するかのような内容でした。闇に包まれた空間での底知れない恐怖や、倒壊した街のリアルな描写は圧巻。狂気に走りテル達に襲いかかるノブオや、銃火器を多数所持して悪用する元自衛隊員など、極限状態における人間の心の醜さについても考えさせられます。常に不安や絶望感がつきまとう展開ですが、地震の多い日本では、いつか自分の身にも同じことが起こるかもしれないと思わせられる物語です。

ライチ☆光クラブ

ライチ☆光クラブ

古屋兎丸太田出版

【あらすじ】町の片隅にある少年達の秘密基地「光クラブ」。そこでは帝王として君臨するゼラを筆頭に、9人の少年達がある崇高な目的のため、夜な夜な「機械」を作っていました。長い年月をかけて完成した「機械」は「ライチ」と名付けられ、「美しいもの」を捕獲してくるよう指示されます。ライチは美少女・カノンの捕獲に成功し、カノンを女神と崇めるゼラたちでしたが……。

【作品情報】作者は『帝一の國』『π』『自殺サークル』などで知られる古屋兎丸先生。1980年代に活動していた劇団『東京グランギニョル』の演劇『ライチ光クラブ』が原作で、2005年より太田出版『マンガ・エロティクス・エフ』で連載。コミックスは全1巻で完結しています。2012年、2013年には舞台化、2015年にはミュージカルが上演され、2016年には映画化もされました。閉鎖的な環境下での少年達の狂気や恋、そして破滅を描いた傑作です。

【おすすめするポイント】アンダーグラウンドな世界観で、終始ハードなエログロ描写に溢れているのに、なぜか美しく思えてしまう不思議な作品。少年達の秘密基地が崩壊してゆく様を、これでもかと執拗に描き切っています。グロテスクではありますが、古谷兎丸先生の繊細で丁寧な絵柄がそれらを美しく感じさせてくれ、「グロは一切無理!」という方でないならきっとお楽しみいただけるはず。機械であるライチと美少女・カノンの美しい愛や、耽美で倒錯的な少年達の関係にも注目です。原作が演劇というだけあり、幕や照明のような、舞台を意識した演出が見られるのもポイント。1巻完結ですがボリュームたっぷりで、本当に舞台を1本観たあとのような満足感を味わえるはず。

鬱漫画クリエイターの他の作品で更に鬱漫画の沼にハマる!?

今回は、心に深く突き刺さる鬱漫画30作品をご紹介しました。どの作品もクオリティーが高くてハズレなし! 自信を持ってお薦めできるので、是非試し読みだけでもしてみてください。きっと続きが読みたくなるはずです。また、今回ご紹介した作品の著者による他の作品も読み応えたっぷり。気になる作家名をクリックして、ぜひ他の作品もチェックしてみてください。一人の作家にのめり込むもよし、幅広く楽しむもよし。鬱漫画の扉を開けば、二度と元の世界には戻れない……一度味わうとクセになる鬱漫画の世界を、シーモアでたっぷり堪能してください。

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