このレビューはネタバレを含みます▼
私もこの作品はかなり昔から知ってはいたものの、設定が突飛な感じがして、読むまでには至らず。しかし、最近ふと読んでみたらなかなか話が深いし、面白いと思った。性愛における役割を、性別で固定化する必要があるのか?とか、愛は契約や約束なのか?とか。それにある意味で、時代を先取りしているような所とか。また男も女も虜にする、謎めいた花房の独特の魅力と存在感が圧倒的。そして途中までは、傑作だったと思う。花房を軸にして、錯綜していく男女の愛憎関係とか。私が特にいいなと思ったのは、一時期まではかなり相思相愛という感じで、お互いに相当夢中になっていた感じの周と花房との関係。もちろん周にも問題はあるのだろうが、この話の人物の中では、マシな方ではないかと思うし。今まで自分は女性に対して冷たかったと漏らすものの、花房に対する彼は可愛いと思う。結局、花房は何を求めていたのか?そこが私には最後まで、いまいち、掴めないままだった。私は自分の両性具有という秘密を知っても、受け入れて愛してくれる相手だとばかり。でも、結局は自分の子供?そして花房自身の妊娠と津也子を妊娠させたこと?を匂わせる最後は、私としては何かと腑に落ちないし、何か拍子抜け。それに話自体も、七臣があんなことになり、迷走し始めたような印象もある。それにせめて花房が生殖能力はないことが多いとされる両性具有という体ながら、なぜそこまで自分の子孫を残したいと思うのか、納得のいく説明が欲しかった。それから津也子が短期間で急速に花房に惹かれていくのが、説得力に欠ける。更に花房に自分の子を妊娠させる七臣に対し、なぜ花房の子を妊娠する相手に、津也子が選ばれたのか?それに最初は花房本人が、自分には生殖能力はないと言っていたのに?花房が嘘をついていたということ?それにやはり、釈然としないのは七臣の死である。その存在が永久にいなくなり、愛し愛されていたことに気付くなんて、私はありきたりに思うし。そして話の終盤で唐突に、花房が津也子とも愛し合うことや関連した、花房とあまりに突然の周との関係の終わりとか。終盤の方は、急いで話を回収したような。樹里と高柳は女性の良くない部分と男性の良くない部分を、凝縮させた存在という感じ。作者は花房は女神ではないとは書いているものの、私から見ると花房はほぼ完璧な存在に映る。女性の柔らかさと男性の逞しさを備えているような。