感謝知らずの男
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感謝知らずの男

萩尾望都

芸術からこぼれ落ちたもの

ネタバレ
2018年6月13日
このレビューはネタバレを含みます▼ バレエ場面は本格的だけれども、バレエの美しさを描いた漫画ではない。芸術家の人生や、生活そのものを描いた作品。芸術は、鑑賞する人たちには夢を見せるもの。だけど実際は地道な職人の仕事。騒々しくてトンチンカンな音楽家を通して、芸術家なんて中身は関係ナシ、と描き、イメージだけで芸術家になろうとして転落した男の悲しさを描き、芸術を誠実に仕事にしている年配女性の凛々しさを見せる。全編通して主人公の不器用な人間としての姿が描かれて、芸術そのものよりもそこからこぼれ落ちたものの切なさが際立つあたり、さすが、と唸らせる名作マンガ。
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