残酷な神が支配する
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残酷な神が支配する

萩尾望都

残酷な美

2018年6月13日
まったく美化することのないところから生まれる美、というのが、個人的には萩尾望都の真骨頂かなと思っています。義父グレッグと母サンドラの心のバランスをとるためだけに、生贄にされるジェルミ。被害者側の苦しみも加害者側の闇も、それを取り巻く様々な人の苦しみも、ストレートに描くからこその剥き出しの迫力がそこにあります。特に被害者ジェルミの圧倒的な怒りと苦しみに、イアンとともに惹きつけられ飲み込まれていきます。全編、読んでいてとても苦しい作品ですが、再生の過程の切なさ美しさは、他の作品では決して味わえません。名作です。
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