コンプレックス・トライアングル
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コンプレックス・トライアングル

さとまるまみ

三者三様の傷と浄化

ネタバレ
2018年9月9日
このレビューはネタバレを含みます▼ スランプに陥った小説家の新発田は、担当編集の笹口から新境地開拓の参考にと恋人からDV被害を受けている青年・御幸を紹介される。でもその恋人が実は笹口で…という、歪な三角関係のお話です。母親がDV被害者で、加害者の父を殴り倒した過去から自身にも同じ衝動があるのではないかと怯えている新発田。裕福な家庭に育ちながらサディスティックな性癖を抑え込んで生きてきた笹口。母親のネグレクトにより、笹口の欲求(暴力)を受け止めることで必要とされていると安堵する御幸。親からの無償の愛情を受けることなく育った御幸は愛されることに慣れていなくて、新発田に愛され傷が癒えることに不安を覚えてしまう。一度は離れてしまうけど、新発田の愛情はちゃんと御幸に染み込んでいて、最後互いの傷を癒すように抱き合う二人がよかったです。笹口は自分の性癖に振り回されて自滅しかけた人。苦しい思いをしたんだろうけど、新発田と御幸を引き合わせたのは御幸から穏便に離れたいという打算もあっただろうしあまり同情できない。下手をすると新発田は新たなトラウマを抱えたかもしれないし、やっぱり身勝手だなと思います。暴力描写や自傷行為ありなので苦手な方は要注意。
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