雲にのる





2007年11月24日
仁王丸という主人公が、仏教の四劫である、成劫、住劫、壊劫、空劫という流れの中で活躍していく物語である。そして絵には孫子の兵法なるものも織り込まれてあって楽しませてくれる。余談にはなるが、宇宙の最大の不思議は「時間の存在」なのである。時間がなければ何も無い。ところが現実は、時間帯という、とてつもなく長い広い帯となって存在し、かつ流れているのだ。あらゆる現象もその帯の中で共に流れている。人の無数の意識という泡も無から生まれて浮かび、そしてはじけて消えて、始めの無に消えていく。これもまた森羅万象のごくごく小さい一つだ。成劫、住劫、壊劫を経て消えていくのが当然である。「雲にのる」を読んでいる時は面白さが先行していて話に引きずり込まれるが、読後感として、人それぞれに空想ができよう。空劫とは何かを考えるのも一興だ。ただし本は、仏教礼賛ではない。

いいねしたユーザ1人
-
コトリ さん
(女性/40代) 総レビュー数:4件