偽りの宦官
」のレビュー

偽りの宦官

日野晶

カップルが切なくてかなり好き。愛が深い

ネタバレ
2019年1月9日
このレビューはネタバレを含みます▼ 受けとなるシリョウを、権力を使って無理矢理愛人にする攻めの太監ですが、シリョウの若さや夢、将来などを奪うことは(おそらく深い愛情ゆえに)したくないからと、
シリョウを独り占めしようとしません。
それを、太監の愛情に気づき、気持ちを持っていかれつつあるシリョウが困惑し、やきもきします。
このくだりは見ていて切ないけど、このお話の醍醐味であるところでしょう。

シリョウのようなタイプの子は、
俺だけの愛人でいてくれ!と、ストレートに独占欲を出してくれる人の方が分かりやすいんだろうけど、
おじさんは色んな罪悪感から、若者の野望は詰みたくないんでしょう。ただ、どんなにシリョウがぼろぼろになっても、自分が拾う気でいる。それって凄い。
誰かに使い倒されてぼろぼろになってもそれを毎回拾うなんて、凄い執着。
だけど、この感じなら、シリョウはもう今後はあんまり貴人の愛人にはなりたがらないんではないかな。
そうであってほしい。

できれば、そこまで描いて欲しかったなぁ。
作品としては、とても美しい終わり方をしていて、
特にラストの、シリョウの将来の願望であった、妻と子供と住むはずの家に、太監と住んでいる夢を見るシーンには泣いた。
しかもここでは、寝台での行為中に催促された時しか言わない「ネイ様」という呼び名で自然に呼んでいる。もう既に好きじゃん。早く自覚して早くイチャコラして!と思わずにいられない。
シリョウが、「俺、太監が好きなのかも」と自覚してるかしてないかぐらいのところで終わってるのが魅力というのは承知ですが、いち読者としてはラストに甘ったるい飴玉が欲しかった。この二人が好きだからこそ欲しかった。他作品が甘いだけに余計に。
なんというか、ひっそりこの話の同人小説か何かを書いて、自分でこの欲求不満を昇華するしかないのか…という気さえしました。
又、シリョウのビジュアルが自分にはツボでした。
他の宦官と比べても、かなり色っぽいと思います。
この二人、また何かに出ないかなぁ。
他の方も言われているように、このシリーズの他作品と比較すると短めですが、元々が同人誌であったそうなので、それならばこのくらいなのかなと思います。
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