秋冷えのオランダで
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秋冷えのオランダで

ベティ・ニールズ/ハザマ紅実

夢見た通りのプロポーズを叶えてくれて

2019年2月9日
私から踏み出せばと、これまでの自分を改めるところからヒロインが顔を上げた感じで良かった。
109頁には一世一代の大告白が始まり、結末までついた弾みが心地よい。
確かに撃沈は怖い。ずっと恋人との噂の、素敵な女性に引け目を持っていたし。

けれど、いくら口が巧い人(彼はそうじゃないと周囲は言ってる)の言葉であっても、そこまで言葉を尽くされてるのに動じないのは逆に、ヒロインが情に薄いと思われかねない。幸い弟妹に対する並々ならぬ保護者ぶりを教授は知っているからそれはないけれど。

あそこまで降るようにロマンチックフレーズを貰っておきながらの、回避行動やもう帰りますって、コレ彼にしてみれば悲しいこと。できればずっと一緒にいたい、無理なら1ヶ月程度でもいい、とまで言ってるのに、本気にせず、言うなればツレナイ態度を取りまくっている。85頁の花の喩えは、これ以上望むのは厚かましい位の最上級賛辞。これも彼女、本気にはしないし。

チームで働く人の言葉としても確かに通じる「僕たちはひとつなんだろう」ではあっても、その次が「君を僕のそばに置いておきたいよ」なのに。すぐ違うわって曲解して。53頁脱出は良かったのに!(76頁街の光景、スキポール空港なども良かった。)

自信家であったらハイ終わり、になるようなところを、まさか口説かれているとは思わないキャラに彼女を置くことで話は数頁ももたせるが、どうもなんだか鈍感力の権化のよう。
父親とか、友達とか、自分のことをそう言わしめる彼の悲しい胸中の方を知りたい位。色目を云々の台詞は、これまでのヒロインの言動故なのだが、これで彼女傷つくというのがなんともー。

ベンがかわいらしいし、健気な強がりがいとおしい。弟妹皆結束力もあり仲睦まじく手放せないから、結末の家族のことは物凄い嬉しいやり方。こんな人居ますか?、それを今まで、確信が無かったばかりに、結果的に可哀想なことをズルズルと。
何より、オランダの食事に美味しいと言えてしまうヒロインは何処にだって住める!

英国は移民問題もBrexitの原因のひとつとされるのに、これはこう(逆移民?)なるのね、ふーん、という印象も。

三作続けて同じ原作者のHQを読み比べしてみたが、ヒロインが動き出す前向き展開の要素がストーリーに力を与えていることも含め、明るさとロマンチック成分の充満度とを考えると、私はこちらを楽しく読ませてもらった。
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