千年万年りんごの子
」のレビュー

千年万年りんごの子

田中相

ファンタジーの中にリアルがある

ネタバレ
2019年3月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ ここ数年で読んだ中でも忘れられない作品のひとつです。人の愛と目に見えない大きな力(神様)のお話。民俗学や秘祭に興味のある方には特に刺さると思います。
雪之丞が徐々にあさひへの愛に気づいていくのと同時に大きな力が立ち塞がるのが、胸が痛かったです。それでも大切な人を諦められないし惨いことも覚悟でする、身体と意志がまっすぐがむしゃらに行動に向かっていく。その描写にリアリティを感じました。昭和の地方を描いたものなので地域の人達との距離感や温度差にもよりリアルを感じましたね。
壮絶なラストでしたがベターエンドだったのかな……と思います。
個人的に妖や神様モノが好きなのですが、彼らは災いでもあり祝福でもあって、いつも自然としてそこにただあるだけなのだなあと畏敬を抱いてしまいますね。『我々は贖いきれない祝福の業火の中に生きているのよ』祝福の業火……すごい表現だなあと思いました。
それでも抗おうとした雪之丞の痛切な愛は。思い出すと泣いてしまいます。
いいねしたユーザ2人
レビューをシェアしよう!