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かわい有美子

かわい先生のデビュー作 硬派なお話

2019年3月16日
かわい有美子先生のデビュー作の新装版です。といっても紙本版発行は2004年、15年前です。こちらの奥付で「10年前の作品」と書いていらっしゃるので、オリジナルは何と今から25年前の話ということに。
話も1993年春頃から始まります。当時の時代背景に忠実ですので文中に出てくる通信手段や看護婦の呼称、ナースキャップ等々に時代を感じますが、ストーリー自体は古臭いとは思いません。

公然と不義の子と知られ親元から離され息をひそめるように生きてきた受と、父を亡くした際に受けた不条理の数々で人間不信になりすっかりひねくれてしまった攻。二人が出会い、葛藤を繰り返しながら、受は生きることの意義と愛し愛されることの素晴らしさを教えられ、攻はかつての穏やかだった頃の自分を少しずつ取り戻していきます。
1・2巻がメインストーリー、3巻が番外短編集です。
ぜひじっくり読んで頂きたい、そんな硬派なお話です。

※2巻の最後の部分で阪神淡路大震災が出てきます。穏やかな日々はいつまでも続くとは限らない、それでもどんな時も二人離れず力を合わせて乗り越えていける…というメッセージとなっているのだと思います。ただ、かなり詳細な描写なので…読者によってはしんどく思われる方もおられるのでは…と老婆心ながら思ったりします。苦手な方は「年始Ⅰ」まで読み、ほのぼのとした幸せを感じたところで本を閉じた方が良いかもしれないな…などと思ったりもしました。
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