坊主憎けりゃ袈裟まで憎い





2019年3月19日
アレクセイのジャイルズ落としの為のTOBは成功した。その間抜け面を拝んでやろうと出席したパーティーでイブに恋をした。ジャイルズの娘とは知らずに。そして「噂」、娘を商売の道具として使っている噂の真相を確かめるためにイブの客室を訪ねてベッドでドレスのまま眠っているイブを見ただけなのに彼は噂は真実と確信した。ジャイルズは抹殺されて然るべき存在だと。アレクセイは猛進していく。ジャイルズの娘が恋する女性でも容赦なくその対象として。彼にしてみれば当然だ。ジャイルズの懐でぬくぬくと暮らしている復讐すべき娼婦なのだから。物語というのは主人公となる者の手腕を完璧にしてはならない。なぜならば、その綻びから糸口を得て発展していくものだから。しかし、完璧に見せなければ読み手を納得させられない。あっと思わせる隠し手が必要なのだ。それに照らせばこの物語は残念。「隠し手」が無いから。アレクセイは最初から「噂」という情報を安直にとらえていることが記されてしまっている。「噂」というのをナメてはいけない。過去にも銀行を潰した経緯があることは史実だ。これこそがイブとの関係をぶち壊した要因となった。アレクセイがジャイルズの身辺調査をしていればこんなことにはならなかった。ここが作中にバレバレであることが白けさせている。成るべくしてこうなったと。白けさせている要因がもう一つ。イブの行動の無さだ。被害者であることには変わりないが、大叔母という存在を登場させたのは興ざめだ。後ろ盾があるのに、なぜこうまで放置したのか、なぜ父と戦わなかったか、と読み手に思わせてしまっている。悲劇のヒロインに仕立てたいのだろうが、甘んじていたとしか読み取れない。同情できない。ここまで色々上げ連ねてきたが、復讐するべき相手の子供に恋愛感情など抱いてたまるか、HQだからとて復讐相手から許しなどいらないというのが心情である。たとえ復讐心に囚われて、復讐相手と同じ轍を踏んだとしても、最後の時は泣きながら笑ってやる。

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hm さん
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