このレビューはネタバレを含みます▼
話題の『さよならミニスカート』が気になり、まずは完結作品からと読んでみた。驚いたのは、この4巻の中に著者がこんなにも複雑な人間関係を描ききったことである。人の命を選別した河口、その事実を隠蔽したあずさ、自分の弱さを他者に転嫁した春日。そして、いじめを黙認していた田沢、大切な命を失わせてしまったと後悔し続ける有明、娘が「普通」であることを願うあずさの両親、人の価値が美醜であるとわが子に植えつけてしまった春日の母。物語にあるように、これは「正義」と「悪」の対立の話ではない。主人公のあずさたちも「正義」の側には立てず、また河口をいじめ続けた春日ですら完全な「悪」ではない。この世界に存在する他者は記号ではなく、個々が意思をもった人間である。そんな物語を「りぼん」で掲載させることに、編集長の気概を感じさせる。
後半あずさたちを窮地に追いつめる教師の有明に怒りすら覚えたが、彼の田沢先生への言葉に深く共感し、その行動に納得した。「人生に傷がつくと二度と修復できないと思い込み、周りの人間を信用せず、誰にも助けを求める勇気を持てなかった」いじめを受けたこどもが、見て見ぬ振りをした大人に囲まれる中で果たしてSOSを出せるだろうかとも思う。しかし、それでも彼らの逃避行の中で少しずつ周りの人間たちが変化する時、その手を掴んでみて欲しかった。そう願うのはもう子供ではない自分が、大人の視点からこの物語を読んでいるからかもしれない。