愛しさは胸に消えず
」のレビュー

愛しさは胸に消えず

梅太郎

人魚の肉にまつわるオムニバス

ネタバレ
2019年4月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ 人魚の肉を食べた緑を中心としたオムニバス短編集。どのお話も切なくて…特に藤江のエピソードがあまりにも残酷で哀しい。一気に読んでしまいました。描き下ろしはその後の八尋と緑、そして藤江。藤江…!
「愛しさは胸に消えず」
記憶を失った大学生・八尋。ほとんどのことはすぐに思い出したのに、同居人の緑のことだけはよく思い出せない。最後まで読んでからこの話に戻ると、また印象が変わるな…。あなたは誰?と聞かれた時の緑の気持ちを思うと胸が痛みます。そしてようやく幸せを手にした二人に感無量。現代のお話。
「秘して名もなき」
海辺に打ち上げられていた緑を助けた青一郎と藤江。藤江の方が八尋より先なのか。主に緑と青一郎のお話だけど、なんといっても藤江が…。青一郎の人柄を知るたび切なさが募る。おそらく明治後期のお話。
「鳴かないことり」
軍人の弟・一雪×体が弱く家から出られない兄・春彦。二人だけで暮らす義兄弟。時代は昭和初期、激動の時代。二人が口にしたものは八尋が言う通りの効果だろうから、せめてずっと一緒に生きられたと思いたい。
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