ああなっちゃったきっかけを、考えるとー





連載の都合からか戦いは手を替え品を替え状態。息もつかせぬ怒濤の展開でスリリングな描写には、ウイルス感染なかりせば戦いの生まれることもなかった、という運命の皮肉がもの悲しい。
好きな人が、自分とそっくりな外見を持つ姉妹の方に好意を持ってしまう。なんて残酷な現実。受け入れるには確かに苦しいこと、それを敵意、憎悪に転化して、行きどころを失った思いを晴らす背景がある。譲れない気持ち。
といって、悪いことは許されない。悪は悪、事情があっても、それは受け入れられないもの。
当麻克之が脇目もふらず、驚くほど愛情を主人公流風に終始捧げてる。これに対して、愛されポジションに謙虚すぎてその「善」の位置の強調が、余計に対照的に憎悪の塊の化け物となった流水(るか)の姿を映し出す。読んでいても、ストーカー並みに二人に流水が対峙するのが激しい。連載なら間隔が空くが、巻で読むと割と息抜きが欲しくなる。巧みな緊張の喚起が却って息苦しさを招く。
特に双子兄弟との対決に至って少し読み疲れる。あらゆる対決が物語を貫き、主人公に完結まで休息を与えず。ほんわかのんびりを求めている心境の時は読むのを避けるべき。
篠原先生は、男の子と女の子とがくっつくくっつかない、みたいな恋の入り口でウダウダは割と少なくて、互いに意識の自覚が早く、双方の気持ち確認も早く、そこのモタモタが苦手な人や、うじうじヒロインのネガティブ思考に付き合いきれない人は、軽く処理しているのでいいと思う。
出来上がったカップルの、そこからの、というところを描くのも悪くない。
爆発とか、町ぐるみ国レベルの巨大なテロもどきが入って、先生の漫画のスケールが好き。
また、ホラーのテイストが入る作風に立ち位置を示してきた先生の本領が、いかんなく発揮されている。
対立の終結は、片方が命尽きるまで。ソレが憎しみの性質なのだと。その何ともいえない構図を、たっぷり何度も消耗戦を繰り広げて見せつける。
話は、戦いというものが目的化してしまっている。当麻と流風の愛を横串に、手が色々突き抜けて通せたりだとか、空中戦も自由奔放、こうした発想を絵に出来る先生だから描けた、といえる様な漫画。
ホラーは苦手な私なのに。
曽祢まさこ先生を思い起こす。

-
月兎 さん
(女性/40代) 総レビュー数:22件
-
マラシャンティア さん
(女性/40代) 総レビュー数:1件
-
にもにも さん
(女性/30代) 総レビュー数:10件
-
romance2 さん
(女性/60代~) 総レビュー数:1852件
-
なし さん
(女性/50代) 総レビュー数:0件