ポーの一族 ユニコーン
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ポーの一族 ユニコーン

萩尾望都

青い霧と黄昏の中に住み、永遠の時を生きる

2019年8月5日
その、青い霧と黄昏の中に居たように見えたエドガーとアランが、この続編では霧よりドライな空気の中に住む感じに、変わってしまった。
彼らは、明るいとも暗すぎるとも言えない黄昏に居た感じが70年代発表作品にはあったのに、バラの村なんて、夢のように靄った所在なげな村だったのに、本作は何だか結構クリアで、なんとなくの不思議なあやしさも危なっかしさも少し後退した感じ。

絵が変わるのは、経過年数から当然で、そこをどうこう言えないが、あの旧シリーズに漂う「空気」が変わってしまったのは、至極残念。それこそが魅力であったと思う。作風も応じて変わったとしても、あの霧と黄昏を詩的な印象でくるむ独特のニュアンスは必須であったように感じる。

今日原画展見に行き堪能、すぐ続編を読みたくなった。展示の原画は最高に充実していた。
あれほど原画を見られるのは素晴らしいチャンスだった。体調が悪かったので、最後の先生のインタビュー画像が流れていたのには時間を取れず、再入場不可が恨めしい位。
豊富な展示物(他の作品-「トーマの心臓」周辺はそこそこには有りーもあり、それもとても良かった)は私に、萩尾望都先生は少女漫画界の巨匠に相応しい存在である、と改めて感じさせた。
帰宅後すぐ勢いよく続編購入。

前から続編出ないものかと期待していたのに、発表されたこと単行本出たことを知ってから、いざ読むのは恐かった。イメージが崩れるのが恐かった。
比較するのは申し訳ないが、最近「一礼して、キス」という若手の弓道漫画で、大した空白期間もないのに番外編でのメインキャラのビジュアル激変で、衝撃を受けてた。

こちらは超長期空白、絵柄変化は仕方ない。スマホ出すとは思わなかったけれど。今の先生の作風になっている覚悟はちゃんとあった。

だけれど、先行発表のコミックス五巻分に覚えた感覚みたいなものへの郷愁は、刺激して欲しかった。
仄暗く切なくどこか耽美でそして、それでもなぜか少年の輝きもその背後に感じる、あの悲しい少年たち。「魔」よりも謎めいているといった方がいいような気がするくらい、生まれながらの「異形」ではないばっかりに、人間臭い人間よりも人間の生きる世界の喜びを知っている彼らの時間の感覚を、絶妙なタッチで語って魅せて感じさせてくれていた、「あの感じ」をもう一度、本当は味わいたかった。

ストーリーとしては勿論楽しめるが。。。
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