セックス・アンド・ワールズエンド【単行本版(電子限定描き下ろし付)】
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セックス・アンド・ワールズエンド【単行本版(電子限定描き下ろし付)】

成瀬一草

北国へ続く、2人ぼっちの追いかけっこ

ネタバレ
2019年10月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ この作品の魅力は空気感にあると思います。高速を駆け抜けるバイクの疾走感、ホテルで繰り返される退廃的行為、北国の寒さ、寂寥感が何とも趣深い。でもちょいちょいコメディを挟むから決して暗くなり過ぎない。こういう温度の漫画好きだな〜。
お話は、夢に敗れたAV男優・泉と、闇金屋・まさおが、追いかけっこしながら捕まってはHして逃げ…を繰り返しつつ北上していくというもの。受けの泉は致命的に考えが足りないダメ人間だけど、根本的には素直で優しい人間。攻めのまさおは、泉に対しては飴と鞭を使い分ける一方、敵と見なした相手は角材で容赦なく殴り付ける冷酷さがある男。2人共褒められた生き方はしてないけど、下賤は下賤なりに輝くとばかりに魅力的に描かれていました。
正直展開に意外性はありません。また薬、ジ殺、レ◯プなど、不穏な要素がそこそこあるので苦手な人は苦手かも?(自分はむしろ謎の爽やかささえ感じたのですが…)
この作品で光ったのが台詞と演出!男達に暴行されボロボロになった泉が、バイクに跨りながらまさおの背中で「街がきらきらして見える…薬のせいだって思いたくない。俺ほんとバカだ…」と言ったのに対し、まさおが「…そんなもんとっくに知ってるよ」って返す所とか。
ゴール後、ホテルの窓際でまさおが泉を抱きしめながら「オホーツク海の夜明けを見ながらセッ◯スするとか、壮大すぎてやべーな」って呟く所とか。妙にぐっと来るものがあります。他にも30万のジャケットとか、泉の実家到着時の演出とか、この作者さんのセンス絶妙に自分の琴線に触れる…(笑) 他の作品も読んでみたくなりました。
出来れば終盤にもう一押し欲しかったので☆4の印象ですが、この作品の雰囲気はやはり何物にも変えがたいので、贔屓目をプラスして☆5としました。
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