いとしさの行方
」のレビュー

いとしさの行方

ケイト・ウォーカー/三浦浩子

記憶が戻るまでは。表題通り。

2019年11月16日
冒頭から俺様目線で破廉恥なこんな男との物語にガッカリと意気消沈して読んでいたのだけれど、真実が分かるまでの我慢が振り子のように行動に現れていたのですね。禄でもない弟フェリペという男。弟とはいえ家族だから許していたラファエル。目の前に現れた弟の話とは真逆な女性セリーナに心を奪われた。子供トニオに対しても母親らしさを発揮し、女性としても魅力的でも、弟曰くアバズレ。自宅に住まわせ、日々セリーナを観察するに募る愛しさは、彼女の中にある失われた記憶という爆弾に脅かされている。そんな表題通りの展開がモヤモヤとイライラを読み手に抱かせて進んでいく。けれど、記憶が戻った時、期待通りの真実にラファエルも私も嬉しくなった。良かった良かった。いとしさの行方は失った記憶次第、というのは腑に落ちない部分もあるが、過去によって人格形成がされるのだから致し方あるまい。それでも、記憶の無い彼女の行動も彼女なのだから、過去は水に流して2人の未来を築けばよいという男らしい潔さも見たかったと思う。下司な弟の所業がきっかけの出会いとはいえ、とんでもない回り道だった。
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