手なずけられた花嫁
」のレビュー

手なずけられた花嫁

スーザン・フォックス/藍まりと

肉親の愛を求めても叶わなかったが代わりに

2020年1月4日
醜い子供はいない、悪い親は居る、と彼は言う。
他の人に恨みをぶつけるなと。
彼は黄金の「中身」を持っていたヒロインの昔を知っていた。
彼女の肉親は彼女へ無償の愛を注いだりはしなかった。「美しい」子どもであったなら、もっと愛された。この大人の条件付け、母からも祖母からも、××でないと可愛がってもらえない、との偏った有りようが、ヒロインをいびつな大人に変えた。誰からも愛されないと諦観して、醜い大人に変わり果てた、孤独にして傲慢な鎧を着た女王様は、自分が優しくされたり大切にされたりする経験を通じ、また、自分の我儘が通らない環境に置かれて初めて、愛されようとしてこなかった自分が変わりたいと願う。
治すのは困難でも、決意して一歩一歩始めた。

彼と一旦離れる経緯は、彼女の心境を思うとかわいそうなのだが、ヤな女キャラを修正するのに彼女もやることはいろいろとある。

クライマックスでの彼の言葉は読んでいてこっちも「来たーっ」、というものがある。
彼女の事を本当に考えてのことだと知るから。

ケイトリンとのシーンが、そんなんでいいの?、との、イージーさをどうも感じてしまって、その彼女のひと働きが話の作りの甘さを余計強めた。

しかし、途中の彼女の、どうせ私の事を気に入ってくれるはずがない、という心情、他の一般的なラブストーリーに見られるような自分への過小評価よりももっと激しく強烈な、自分を突き放す意固地さに、彼女の凝り固まりの頑固さにどうしようもなく憐れを感じた。自分で自分を追い込み、頭の片隅で気づいているのにやらかしてしまう、車は急には止まれないその感じ。それでも、なんとかなりたい自分への思い、生まれ変わるきっかけを自然に与えたくれた彼への思慕と自分なんか(イイ人でない)に彼が構っていられるはずもないとの悲しみ、好きなのに言えるはずもない、というポジションに同情も。

彼女がアスペンにどうしても急ぎたかった動機、そして、それが叶えられなかったトラブルに遭遇してしまったことへの同情とで、少しも自業自得などとは思えない。

この話は彼のキャラが納得的なものでないと成り立たない。
その辺、ビジュアル、台詞、行動力、発想などなどよくキャラが滲むようなシーンが描かれていて、ヒロインの曲がりくねったしまった心の迷路から、ヒロインがヒロイン自身を救出(改心)させる事がうまくいっている。良かった。
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!