ぼくの歪な楽園【電子単行本】
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ぼくの歪な楽園【電子単行本】

ハシモトミツ

歪さが圧倒的に足りない、愛も不足してる

2020年1月13日
率直に、歪み方が足りないと思いました。
表紙とタイトルから受けるインパクトや、出だしの犯罪への巻き込まれ具合から「うわぁ…」となり、もっと普通では考えられないくらいドロッドロな歪み方を期待してしまいました。
普通に育った人間には理解できないような、この2人だからこその世界観に圧倒されたかった。のですが、そういったものはとくになかった。

たしかに、幼少期のせいで考え方は歪んでいたと思いますが、あんな過去があって子供の頃から互いにずっと執着していたわりには、普通のBLよりも執着心に物足りなさを感じるくらいでした。

なぜ?と考えてみたところ、色々と描写不足というか、全体的に足りない。物足りない。
あんな計画を立てるほど柊平に会いたかったくせに、修平の居場所が分かっても兄に抱かれ続けてた八雲の心理も分かりませんでした。
計画立てて偶然を装ったりする余裕があるのが、なんだかな〜。

居場所を知った途端駆け込んでいくくらいの余裕のなさが欲しかったです。
頭おかしいくらい好きなら、何も考えられなくなってなりふり構わず柊平の胸に飛び込みに行けよ!と。
そうならない時点で、気持ちが足りていないと思うし、そのくせに求める想いだけが歪んでいることに納得ができませんでした。

柊平の方も、八雲に偶然再会するまでは、もう八雲なしで生きていくつもりでフツーに、真面目に生きていたじゃないですか。職業はアレですが。
忘れられない過去ではありつつも、どうしても会いたいだとか、今の八雲を一目見たいとかって探したりもしていなかったんだなと、こちらも想いが足りないどころか全く歪んでいないように感じました。

この作品で1番歪んでいたのは、八雲の兄の出雲だと思います。
フツーのイケメンだったのに、間違った愛情表現を覚えてしまった弟に流されて、弟への同情心が愛に変わっていったあげく、あっさり捨てられてしまうなんて。そりゃ歪むわ。
最後は諦めの境地に入って、人生歪められたあげくまともな思考に戻らざるを得なくなったお兄ちゃんに切なくなりました。
正直、八雲×柊平よりも、兄との歪んだ恋の方が見たかったかも。
出雲を1番幸せにしてあげたい、見守りたいと思ってしまった。

ラスト借金取りやってた人がまともな職にあっさり就けて、2人だけの歪な世界と言いつつ普通に幸せな愛の巣だったり、普通な終わり方に逆に不満が残りました。
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