純文学





2020年2月7日
正しく指導してくれる父と大人に恵まれず、捨てられることを恐れて縋る子供のまま身体だけは大人になった雪刀と、過去の自分の行いから抜け出せない後藤との2人して静かに呪縛を葬り生きていく、純文学の様なお話でした。一見、雪刀のファザコンからの脱出が軽いようにも感じますが、既にその辺りには執着はなく、人間としての尊厳を求めていたのでしょうね。頭の良さに加え、子供特有の執着の無さでしょう。パパと呼んでいる所から、かなり精神的に子供の様子ですし。全体を通して雪刀の幼さが垣間見えるので、あっさり切り替える所にさほど違和感がなかったです。喪服の花嫁という題名のセンスが光ってました。雪刀に、抱き留めてくれてありがとうと言われた時の後藤が、突き放してしまったあの後悔を抱き留めて救われたように私は読み取れたので、そこの描写がとても印象的です。題名と表紙の耽美さから、かなり重厚な暗めの話に思えますが、作家さんが頑張ってライトにした様なので、暗くないです。

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