雨降りvega
」のレビュー

雨降りvega

凪良ゆう/麻々原絵里依

文体が好き BL無関係にスタイル良かった

2020年2月15日
映像で表現しようとするよりも、文字は文字のまま書き表しているところが沢山あって、却って字面の流れと、言葉選択の明瞭さがリズムよく入ってきた。主人公文人の相手をなかなか名前さえ出さないこと、ストーリー上無理がないが、まるでそこに読者への効果を計算しているよう。心のなかでは近く、実生活では遠いまま、やっと持てた希なる接点でさえ、相手から彼のテリトリーに立ち入らせたてもらえない煙幕がかかる。根拠はストーリーと共に不可分に置かれているのに、主人公視点からの彼の姿とダブらせてもいて、良くできている構成なんだなと。そこへ、初めて名乗る場面来て、そこにやられたな、と感じる。うまく行かないままにただ時間経過をしていってしまうベガとアルタイルをもイメージに乗せてるんだなと。
その他天文関連材料も使って統一感巧み。
二人の苦しい関係について大袈裟に煽り立てたりなどせず、まさに雨降り模様がお似合いの二人に、弱く細い雨がここというとき切なさを添えている。

いろいろご都合主義もあるが、筋立ての新奇さを期待しなければ、各場面のクリーンな描写力を気持ちよく読み進めて、時間進行の中で正反対に関係の方のサクサク進行がない二人の推移を味わえる。

新開氏の心情が抑制的に扱われる分、文人視点の心のアップ&ダウンは同調して読める。しかし、見えにくい新開氏の心の中の空模様に対する共感は、築かれにくい。
新開サイドの小話「七年目の雨上がり」が本編後差し挟まれていて、掬い取り足りなかった部分は少しフォローされてはいたが。あとがきで、一方の気持ちを書きたかったとのこと、そういう作者の意図を受け止めねばとは思う。

過去既読済みの凪良先生作品「未完成」と、ストーリーのほうは、なんとなく似ている感じが拭えない。お詳しい人は立場的に見て逆と思うかも、だが。

88%5行目、「出来れば一生知りたくなかった」が正しいのでは?「知りたくなった」とあるが。
紛らわしくなるので、誤植ならそういう所は出版前に直して欲しい。
いいねしたユーザ3人
レビューをシェアしよう!