坂の上の魔法使い
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坂の上の魔法使い

明治カナ子

忘れられない作品になりそうだ

ネタバレ
2020年2月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 魔法使いの話が好きなので関心があったが、ジャンルがBLのこのシリーズ、なかなか手を出す勇気がなかった。
あるレビューアーさんも書いていたが、私も転職で時間が生まれ、ならばこれをと、じっくり読むことに。
ストーリー超絶面白い。明るくはない。謎もあれば敵もいる。気味が悪くてダークな要素と寂しい感じが、華やかさの無い絵と合う。
私は、この好みではない画風を、表紙から既に多分に感じていて、購読を長いこと敬遠してたのも事実。絵を重視するので、ストーリーにこれほどまで引き込まれなかったら、読み続けられない。

話に引き込まれて、見た目に酔わずしてこの物語の国へスッと入り込めた。

こういう創作を読んでしまうと、ありきたりの日常風なドラマよりも「お話」で別空間に一気に持ってかれるので、本を閉じたときいつもの周りの景色の中に戻っている自分になんともいえない感じを持ってしまう。

使役、この存在なかなか凄い。
途中いろいろ禍々しいものが度々登場するが、筆捌きに滑らかさがない分、余分に薄気味悪さもある。それなのに、二人の師弟関係、世代の離れた養い親と養子の関係がイヤらしくなくてむしろキレイ。

独特のこの国や町の設定がストーリー展開に全て関わっていて、オリジナリティ満載。それでいて昔からあったおとぎ話のような。

「マキ」が中盤で投入されたがストーリーへの関わらせ方が上手すぎて、王国の崩壊への興味もつなぐ。
魔法使いリー様の王との思い出のフラッシュバックも、いつの間にか回想にリーが入り込むのが、実は強引な被らせ方なのに、二人の微妙さをいい匙加減で表してる。
ただ、長生きしていて恋愛禁止の魔法使いの世界という設定の制約に助けられて、リー様のビジュアルは枯れた感漂うのが私には惜しく感じ、正直もっと色気有って欲しいと欲が出る。

子どもであるからと言えばそれまでだが、ラベルが余りにこどもっぽく、この人物には自分が投影出来ないのでそこは楽しめない。しかし、使役が名前がない、という、ハリポタでいうところの屋敷しもべを思わせる生き物が多くいる設定のそのストーリーに、このこどもは名をラベルというのが、なんだか作者からの意味付けがあるように思えて、本当に作りが凝っていると感じ入ってしまった。
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