診療所の天使
」のレビュー

診療所の天使

キャロル・ウッド/津谷さとみ

幸せが沢山

2020年2月25日
心が洗われる、というかじんわり温かくなるというか、クリスマスの時期のお話は読んで良かったなと思わせるものが多くて嬉しい。絵がうまいので種々のアングルで診療所のある家や、お金持ちの邸宅、診療所や人の集まるいろいろな室内の様子が生き生き。人物に清潔感や、人となりを示す雰囲気のある表情が出ていて、また、様々な向きから描かれるため幾つものコマによってキャラが立体的に感じていく。英国の町、その頃の服装、テキトーに描いてないことありあり。
私は、ヒロインの嘘のつき方が、あまり好ましいとは思えなかった。他のHQ(別の作家) でも同様の逃げのシーンがあったが、他に好きな人がいる、という言い方の嘘は、向き合わなければならない時に使う言い方ではないと。自分が傷つきたくない、ということなのだろうが、これは自分が相手を好きになれない時だけ、相手を傷つけぬ方便だろう。好きな相手に、他に好きな人がいるという形で逃げを打つのは、このやり方は、結果的にとても不誠実だ。
私は、感情のやり取りがヒロインの望むものでなくても、示してくれた好意に向き合った答えを返すべき、と、感じた。他の人と結婚すると思っていても、仮に二股疑惑があったとしても、自分の感情は大切なものだと思うから。

映画「パラサイト」が話題となっていて、しかも、COVID19(新型肺炎)も毎日のニュースになっている、正にこのタイミングに、地階に住むヒロイン達や、当時の恐ろしい伝染病ジフテリアが取り上げられているこの作品、メインキャラ二人の貢献が、とてつもなく尊いものに見えてならないことも、別の意味で人間としての器の大きさを表しているようで、良かった。

私がこどもの頃はまだ街角に傷痍軍人さんがいた。
このストーリー、彼もまた、天使のヒロインの相手にふさわしく非常に世のため人のため人間で、頭が下がる。

ヒロインの思い込みによって傷ついた彼、お話だからたやすくリカバリー場面になるが、彼を傷つけたことに対する認識が彼女に足りないと思える。

HQはよく「傲慢ヒーロー」が謝罪足りないと指摘を受けているが、私の目には、ヒロインのこういうかわしは、自分が勝手に自分のことを悲劇の主人公にまつりあげた結果なのだから、ひとこと彼に伝えるかはともかくも、そこは何らか埋め合わせの場が有って然るべき、と思ってしまう。
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