おやすみプンプン
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おやすみプンプン

浅野いにお

敏感で素直な人を敏感で素直まま描いた傑作

2020年2月29日
あえて主人公をプンプンと言うマスコットに置き換える事によって日常描写の冗長さや陰鬱な場面にテンポを与える表現が非常に素晴らしい。更にはそのマスコット化自体が後半には別の意味を持ち始める構成も巧。
またマスコットによる効果として、そこに主人公がありながらもその存在が不透明な為、感情移入の妨げが一切ない。
主人公は若干HSS型HSPの具合があり、具体的には自らを傷付けるほどの感受性の高さを持っていて、その上当人が非常に素直だから、その事による優しさや痛みを若さと言うフィルターを通して受けていく。同じ性質の人間が見れば強い共感を覚え、同時に彼を通して読者の側でも同じ傷を負ってしまうでしょう。
しかし作者が意図してなのか、自己投影にも近い感覚を覚えてから、その意識が急に勝手に暴走し始めると言う展開には目を伏せたくても伏せられないものがあります。
葛藤しながら生きている大学生に読んで欲しい傑作です。
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