淑女と娼婦
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淑女と娼婦

秋乃ななみ/ニコラ・コーニック

娼婦の天敵

2020年3月5日
世界最古の商売といわれるそれは、女一匹生きていくために、社会がその存在を非公式に受け入れてしまっている(男性社会で・・)。戦争、略奪、親の死。
この話は、ヒロインの姉がポジティブ、成り上がりの双六を果たす。まさに身体を張って。
ヒロインはその性格から教職へ。姉とは正反対だけれど、その時代女手で生きるには、ある意味共に最も普遍的な選択肢。
長子が相続する分割不可能な賃借権、第二子には分与不可能だったけれど、後半に新展開、御姉様がいきり立たずに良かった。二人の姉妹仲が良いという設定が生きる。

絵が兎に角丁寧で、英国田舎の雰囲気の絵とノーブルな人物絵。招き猫に笑った。
君のような女性は二人といない等々笑いを取り、明るい。双子姉妹それぞれのやり方で逞しく生きていて、男性を、社会を相手に負けてない。
啖呵を切る場面が格好いい。

ロマンスは余り強くない。意識はする程度で進行。悪党が後半出番になり、互いの恋愛感情が確固たる意思表示を呼ぶ構成は、HQあるあるのもの。手際よく展開、結末までまとまり良いが、そこは少々何処かで読んだ感も覚える。

女の生き様として、自分のやれる範囲で、或いは主体的に、自分を生きたい行動の結果が皆ハッピーで良かったじゃないの、という思いがする。

財産が有って初めて迎え入れられる上流社交界、過去を含む社会的バックボーンが信用を得てないと歓迎されない狭い貴族コミュニティ、女が生きていくのはやはり男性次第か、という当時の現実を如実にしている1つのシンデレラストーリー。

秋乃先生の男性に嫌味がないので、ヒロインに冷たく出ようとするところがそこまでなりきれないように見えてしまう。反対にその後の二人のシーンに熱さが現れ出た訳でもないので、ロマンス曲線の起伏は少ない。
しかし貴族は貴族、舞台装置がそれらしく見えるので安心して楽しめる。

村人の誤解はどうするのだろうか。
御姉様の評判は覆せない。
将来身内からヒロインは後ろ指指され続けるのだろうか。
ミセス・アプルトンの今後は?

4星にしたが再読で、彼が、身内に娼婦も犯罪者もいるのよとのヒロインの躊躇いを押切る様が気持ち良かったので、5星に上げた。

海外に出た為諦めていたのに残ポイントを使って読めて嬉しい。ダウンロード済でないとダメとの回答だったが、ブラウザで読める。国に因るとは思うが、このアジアの一国は可能だ!
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