たそがれたかこ
」のレビュー

たそがれたかこ

入江喜和

ロックなお話

ネタバレ
2020年4月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ ついつい中学生の彼の今後を考えてしまったり、最終巻の解釈は難しいところだと思いますが…個人的に、ヒントは1巻にあるのかと思いました。
中学生への愛の告白…理性的、世間体を考えた普通の行動としては大間違いですが、では、「80の母のお世話とパート勤めに追われる、拒食で不登校の娘をもつ45才バツイチの女性」の理性的、世間体を考えた普通の行動とはなんなのか?…それを突き詰めた先にあるのが、1巻冒頭の主人公だと思うのです。生活疲れをして近年の40代にもみえないやつれた姿、夜中突然とめどなくあふれる涙、憂さ晴らしは安酒を飲む程度…さえない40代の女性は、そんなふうに粛々と、地味に、静かに、不満も不安もだまって噛み砕いて飲み込んで生きていくことが正しいのだと。。。
1巻あとがきには「主人公らしからぬ主人公を描くことは自分なりのロック」というような作者コメントがありました。読者にも「突き刺さる」最終巻あの場面は、ストーリーをとおして自身もまたロックになった主人公の、「世間が望むさえない40代女(の正しい行動)」への(ある意味では比喩的な)拒絶の表現なのだと思いました。
というわけで、感想は【とてもロックな話】。人生に疲れて退屈で不安な日々に、叫ぶような歌声で励ましてくれるようなお話でした。
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