手天童子
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手天童子

永井豪

美しい大団円

ネタバレ
2020年5月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ 体裁は伝奇アクションマンガだが、メインテーマは「母親の子離れ」という異色作。妄想で鬼を生んだ母親は、なぜ15年後に鬼が子を迎えに来る、という仕掛けを施したのか? 彼女の理性は、子供はいずれ親元から離れ、自立しなければならないと覚悟しているからである。だが、それでも母親としての盲目的な愛情が、愛児との別離を強烈に拒む。その苦悶が鬼となったのだ。初めは鬼を恐れるだけだった子は、思春期を迎え、家庭の外に恋人、友人を作るに及んで、鬼に立ち向かう決意をする。それが自立である。やがて鬼を倒し、子供ではなく一人前の大人と両親に認められるに至って、子は本当の意味で、親に従属したモノではなく、一人の人間となるのだ。
人間誰もが持っていながら目をそらしている後ろめたい感情を、鮮やかにえぐってくる豪チャンの天才にはまさに脱帽。美しいエンディングも必見の作品である。
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