灰の月
」のレビュー

灰の月

木原音瀬/梨とりこ

胸が痛いハッピーエンド

2020年5月9日
自分の欲望を満たしたい。
誰もがそういう欲を持っているけれど、ヤクザという人種は、それが一際強い人間の集団なのかもな、と、それが読後浮かんだ想いでした。
クズやアホや小狡い小物、それぞれの欲望を満たすことに躍起になる中、最も切ない欲望を秘めた男は、
賢いが故に満たせないことを知っていた。
だからこの結末は、彼にとってあり得なかったはずの、ハッピーエンドでしょう。
人の闇をこんなにも愛しげに描く作者は、人間という種族の愚かさをも愛しているように思います。
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