このレビューはネタバレを含みます▼
絵柄の耽美さと、情景描写の丁寧さ、心理描写の巧みさ。そして台詞、創作物らしい文章的な台詞も上手く、日常生活で普段私たちが何気なくぽっと出してる言葉、口語の使い方が非常に上手い。「かっこ悪いことにそいつは抱きしめられたい男なんだ」の一言であのシーンを、あの状況を、ジョルジュの葛藤と苦悩と未来を劇的に変えてしまうだけの説得力を端的に表す天才的なセンス。皆が皆人間らしく、善良だが時と場合により悪にもなり状況が変わると善に戻る、泥くさいありのままのヒューマンドラマを、この美しい画風で読めるのはすごい。ラストのなんと処刑場での明るすぎる(ロワール家にとってのみの)ハッピーエンド、ギデオンとジョルジュとソランジュの波乱に満ちたわちゃわちゃ生活を予想させるヒーロー漫画のような終わり方には本当に驚いた。最初から最後まで予想できない展開の連続、面白かったです。