美しの首
」のレビュー

美しの首

近藤ようこ

大人の昔話

ネタバレ
2020年5月25日
このレビューはネタバレを含みます▼ この作者さんの作品は幾つかずっと気になっていたのですが、キャンペーンで半額になっていたので即購入。(定価は千円前後のものが多い感じ…。)

短中長編合わせて4作品+解説エッセイ。中世の風俗などがよく伝わる、細かく描き込まれた背景の絵が味があります。どこか可愛らしい感じ。
なのに不気味さや不安感が漂う独特な世界観。唯一無二の作風だと感じます。

美しの首、雨は降るとも…大坂の陣を経て、豊臣の時代が終わった頃の様々な男女の人生を覗き見ている気分でした。切ない…

様々な身分の人たちの生活感や価値観が散りばめられているので、不思議と現実味ある。どれも想像を掻き立てられるラストが印象的です。
自分の生まれた時代と境遇に阻まれるおまあと犬丸、あのあと2人は恐らく…と思うと堪らなく切ない。

安壽と厨子王…かつては様々な権力者たちが社寺に多額のお金を使っていた史実を思うと、この梅津院や厨子王のような考え方も珍しくなかったのかなと、ふと思ってしまいます。恐ろしくも強か。なかなか衝撃的な展開でした。
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