信長を殺した男~本能寺の変 431年目の真実~
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信長を殺した男~本能寺の変 431年目の真実~

藤堂裕/明智憲三郎

つじつまが合っている

2020年5月25日
何が史実なのかは、証明できないとしても、垣間見ることはできる。例えば、信長があの時代に階級を超えて実力主義が採用できたとすれば、寛大さと観察眼がないと難しい。イメージの多い無慈悲な絶対君主ではなく、階級に対しても分け隔てのない気さくさを持つ性格という記述は、実力者の採用という戦略としても適切だと思うし、秀吉の取扱や出世からも証明されていると思った。

逆に低評価レビューに書かれている秀吉視点が書かれていないことについても、私は問題ないと思う。これは明智家から見た真実なのだから、プロパガンダであろうとなかろうと、全力で挑んだ祖先に対する敬意を含む彼らの真実であることに変わりないと思う。そもそも情の絡まない史実は存在しないと思う。

後発の定説だけに、今まで合っていなかった部分でのつじつまが合っていることが良いし、新しいと思った。この話が語る真実は今まで語られてきた真実とは異なってとても興味深い。永遠に証明できない史実に近づくために歴史に加えるべき新たな視点という側面で充分に価値のある作品だと思う。
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