SHAMAN KING
」のレビュー

SHAMAN KING

武井宏之

作家さんがやりたいことと「武闘大会」形式

ネタバレ
2020年6月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ 完結編の前に連載終了を見届けていました。
序盤の面白さ、テンポの良さ、作画のパワフルさ、キャラの立ち回りのカッコよさ、ジャンプの古き良き物語力を差し引いても面白いです。この世ならざるものを闘う力に替える考え方はいわゆる「ジョジョ」のスタンド的なものですが、シャーマンキングの場合は「霊媒師」や「イタコ」という日本・アジア特有の霊的な文化にもとづいて表現されており、キャラデザも身近な小物が中心で、愛嬌が前面に打ち出されています。
多文化と宗教観念が繁栄されたキャラクターたちは温故知新のスピリットが感じられて、子供心に読んだときはすこし賢くなった気がして、異国のシャーマンが登場するたびにワクワクしていました。
問題はシャーマンファイトが始まって以降で、ハオの存在は強大で主人公の葉と良い対立構造なのですが、いかんせんキャラクターが膨大な数になってしまったことでとっ散らかっていきます。ジャンプによくある聖闘士星矢的な「武闘大会」に入るとどうしてもストーリーの停滞が激しくなり、「誰だっけ?」「あの人どうなった?」と、ラストの扱いも葉とアンナ以外は語られるものが少なくなってしまってます。マルコやホロホロの過去話もあまりに終盤に出てくるので、自分のなかで人物像がすっかり出来上がっていたころだったので、いまいちしっくりこなかった、というのが最初の感想でした。特にホロホロは主要人物だったのだから、登場時にやらなかった理由がよくわからない。序盤にやったアポロの話がめちゃくちゃ良かっただけに、ホロホロのアイデンティティにはあちらのほうがしっくり感じました。
後半から葉とアンナ、そしてマタムネとの出会いが語られる恐山ル・ヴォワールが始まりますが、この話こそシャーマンキングの要だったと思うと、シャーマンファイトの流れとは食い合わせが悪かったように思います。ハオ陣営・葉陣営ともに人数が多い割に、ハオに影響する人が、結局シャーマンファイトによってたいしていないというのが大きかったのかもしれない。
作者さんのストーリーテリングの手腕と、王道エンタメのバランスにどう受け止めたらいいか分からないまま連載が終わり、楽しかったけど残念さも否めなかった、と思い出深い作品です。再アニメ化で何かが解決するとは思っていませんが、当時の声優さんたちがすごく好きだったので、このタイミングでやるなら期待していいのかな。
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