3.11東日本大震災 君と見た風景(分冊版)
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3.11東日本大震災 君と見た風景(分冊版)

平井寿信

風景は、どこに?

ネタバレ
2020年6月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ 過去に単行本を購入し、読み、続巻が出るかもと思いながらも「離脱」した作品。イラストレーターさんが、表題に「風景」とぶち上げながら、震災のようすも、街のようすも、いわゆる「引き」の絵がないというのは、なんともですね。あるとすれば、実家の「平時」の周辺だけですかね。

なにも、悲惨な、震災時の被災地の絵を見たいという、悪趣味は、当方持ち合わせておりません。

しかし、タイトルと内容の乖離がありすぎて、なんというか、残念な気持ち。わざわざ、表紙に「3.11」と「見た」を赤く強調しながら、なにを「見た」と、つたえたいのか…

仙台市の副都心というか、ベッドタウンが「舞台」となり、過酷をきわめた沿岸部の様子などは、少なくとも、私が過去に読んだ震災後1か月ほどの時点では、出てきません。

震災の日のうちに、家族全員が「再会」でき、日ごろから、近所に物資を配るほど余裕のある実家に身を寄せ、自宅を失った姻族を迎え入れたりもする。

ここで「身内礼賛」が多分に感じられ、しまいには、お姉さん?がネット販売しているらしき「グッズ」を、作中で紹介しはじめる…

仙台市の中心部の方でも、これだけ、日常生活に支障をきたして、大変だった、という観点からすれば、ありといえば、ありの作品かと思います。

しかし、なんというか、これが震災の様子を語る代表作のように扱われるとすれば、ちょっと違うと思うのです。

おそらく、沿岸部の被災地にも、絵を描ける人は、たくさん、いらしたはずと思うのですが、とても、思い出して描き現わせなかったのではないでしょうか。

その結果「比較的ショックの少なかった」、作者さんによる本作が、おもてに出ているのではと推察します。


作品内容に「3千万人が、かたずをのんで見守ったブログ」とのようにありますが、それって、日本人の、およそ4分の1ですよね?

大変、不勉強ながら、私は、まったく、本作(ブログ)を存じあげませんでした。



最近、いろいろなマンガのアプリで、この作品が取り上げられ始めているようです。それはそれで、業界から、一定の評価を得たからなのでしょう。

ただ、実際の、被災県の友人によりますと、

「この作品が、震災時の『ありのまま』を伝えた作品として、周知されていくのであれば、ちょっと違うと思う。」とのことでした。
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