Artiste(アルティスト)
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Artiste(アルティスト)

さもえど太郎

「誰か」のかけらが必ず見つかる

2020年6月30日
作者さんが実際にフランスでこのような生活をしていたのだろうか?と思わされるぐらいにしっかりと取材や観察によって描かれているとしか思えないフランスの日常風景。
フランスの土地を踏んだことのない人間でも、きっとこんな日常なんだろうなと思わせてくれるぐらいに背景もキャラクターの細かい動きも馴染んでいる。
気弱なシェフが濃い人々に囲まれながら少しずつ成長していくヒューマンドラマの中に、「謝られる側がなぜ謝る人間の心を慮らなければならないのか」や「人の噂話の信ぴょう性(本質)の無さ」など、今の時代に読むからこぞぐっさぐさに読み手の心に刺さる。
レストランやアパートに集まるのは個性的すぎるキャラクターの集まりだけれど、その中に必ずどこか「自分」のかけらや「身近な誰か」のかけらがある。読み終わった後に、自分の気持ちや態度を見直したくなる上質な一冊。
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