本好きの下剋上
」のレビュー

本好きの下剋上

香月美夜/椎名優

骨組みのしっかりした作品

2020年7月10日
なろう出身だと信じ難いレベルのしっかりした「小説」。基本としてストレスになるような文章の稚拙さや大量の誤字脱字や展開の齟齬もなく、例え本編に出てこない設定でもしっかりしているのがよくわかる。あらすじとしてはそこまで突飛なものでもなく、最底辺からの這い上がりで本人の望みを叶えようとしているうちに望んでいない邪魔な身分までくっついてきたという話。だが、ここで小説として機能しているのが、その必然性と意外性とキャラ達の生々しい思惑、感情が絶妙に絡み合って展開していくところ。先が読める展開でありつつ、意外性が残っている。主人公の大事な人々との関係性の変化については、自然で必然で、ターニングポイントでは涙を誘わずにはいられない。
長い長いシリーズなのに、まとまっていて途中で失速することもなくずっと生き生きしている。読んで損はない。
…蛇足だが、挿絵と本文の齟齬がないところも個人的に高評価。きちんと打ち合わせしている様子で細かいところにも手抜きが全くみられない。挿絵作家さんの構図の取り方が絶妙で画力とイメージ力の高さも素晴らしく、小説に非常にマッチしていて尊敬に値する。巻末おまけ漫画など、作品をより深く理解していないと描けないレベルの絶妙ポイントをついてくる。これだけ沢山のキャラの描き分けがしっかりできているのも納得。
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