兄弟日和
」のレビュー

兄弟日和

つげ雨夜

切なくて愛おしくなる

2020年7月11日
「忘れろ」と弟にかけた暗示を解くために戻って来た兄。ずっと止まっていた時間が動き出します。一冊全て表題作で淡々と進むストーリーの中でお互いを欲している様子が明らかになっていきます。背徳感はあまり強くないのですが、兄の瞳が夜の海のように深くて暗い憂いを帯びていて、気持ちを封印してきた年月に深い懊悩が読み取れます。弟は幼い時に抱いていた気持ちは忘れていて、兄の帰郷により様々なことを思い出していきます。実の兄弟ものですが、幼い頃からの2人の結びつきや想いが胸になだれ込んできて2人の願いが叶うことを望まずにはいられませんでした。読後感はよいです。もう少し先も見てみたくなりました。総183ページ。修正は見えない構図。
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