あゝ我らがミャオ将軍
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あゝ我らがミャオ将軍

まつだこうた/もりちか

良い子だからこそ素直に応援したくなる

ネタバレ
2020年7月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ 独裁国家のトップを務めることになった9歳の女の子のコメディ奮闘記。JSにスポットライトを当てた作品の多くに、周囲の大人達を困らせるクソガキが登場する。僕はクソガキが嫌いだ。特に子供という立場を利用し、大した咎めを受けないことを理解したうえで、悪戯する子供の姿は憎たらしく思う。本作の主人公は、幼いながら国家のトップという立場を受け入れ、国民の幸せを願って奮闘している。大人達の声にも素直に耳を傾けるし、自分が未熟であることを認め、支えてくれる大人達に感謝している。とても良い子である。自分が同じような立場だったら、増長して我儘の限りを尽くすと思う。信じられないくらい、真っ直ぐに育っている。大変微笑ましい。また、同世代の子供と遊ぶことが大好きという、子供らしさも兼ね備えている。漫画の世界だと、似たような境遇にある子供は、年齢の割に大人びていて、感情の発露に乏しいキャラクターが定番だが、本作の主人公は表情がコロコロ変わり、見ていて楽しい気分になる。特別能力が高いわけでもない、どこにでもいそうな普通の良い子が頑張っている。だからこそ素直に応援したくなるのだ。
また脇を固める大人達のキャラクターも実に好ましい。僕は、他人に迷惑をかけるようなことをしても、子供のしたことだからと、簡単に許してしまう大人が大嫌いだ。本作の大人達は、子供だからといって過度に甘やかすことはしないし、もちろん媚びを売るようなこともしない。ダメなことはダメとはっきり言っている。施政を通じて教育と躾を行っているように見える。為政者と臣民ではなく、家族のような絆を感じる。大人達は失敗した主人公を叱咤激励する。主人公は大人達を信頼し、期待に応えようとしている。だからこそ素直に応援したくなるのだ(2回目)。
描線はすっきりしていて、万人受けしそうな絵柄だと思う。展開は単調ではなく、コメディとしても出来は悪くない。もっと評価されるべき秀作である。
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