毒姫の棺
」のレビュー

毒姫の棺

三原ミツカズ

普通の人にはおかしく、違う人には愛しい

ネタバレ
2020年8月8日
このレビューはネタバレを含みます▼ 毒姫シリーズでは語られなかった部分が変わらぬ美しさで表現されていて単純に楽しかったです。
ただ、これはあくまで補完。
毒姫シリーズ1~5を読んだ後じゃないと楽しめないし理解できないので、毒姫シリーズ読了してからお買い求めになるといいと思いました。
この作品群は、とくにイカルス王の狂気が明示され、そのおぞましさに胸を詰まらせる方もいるかもしれませんが、私にはその“裏”あるいは“影”があることで人間味が増し愛おしく感じました。
この作家、またこの手の作家の作品をいくつか見てきて分かった王道パターンが、
主人公が何らかの狂気を帯びていて、しかし、その主人公が同情を誘うような言葉をぽつりぽつりと呟いて“相手”に「そんなことはないよ!」と言わせ、
普通の人に、甘いケーキと芳しき紅茶のセットを頂くつもりで読み始めたのに腐った肉と出がらしのお茶を飲んでいるような空虚感を与えるが、心を病んでいる人には心に沁みる温かいスープを飲んだ気にさせるのですが、
「毒姫」は本当に甘い。けれど苦い。
「毒姫」は、三原ミツカズがその倒錯同情王道パターンから外れてひたすらに生きることを望みあがき続ける人々を描いた物語。
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