少年の境界
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少年の境界

akabeko

力強い恋愛優先ストーリーの主軸が胸を衝く

2020年8月25日
オメガバースの作りの中で展開されるタイプのBLは、社会的生物的にその「底辺」に追いやられてしまう存在を作り出してしまう設定になっている。物語上で創造されたポジションに過ぎないとはいえ、オメガキャラの人権はその世界では大切に扱われない、人権侵害要素が入り込んで、そこにドラマを構築されもしていたわけだが、本作はその前提に乗っかって前提そのものに切り込む。全く異質で、それなのに本質的で、そして見せてくる話の骨格の美しさに強い印象。しかし、薫を1ヒーローとして遥かな高次元に設置、対極も設置(、して彼((ら))の心の中を見せつけられて、読み手の私は物語のメッセージ性みたいなものに触れる)、群像で年頃の男の子達を見せながら、メイン一人一人にはシビアなリアルをくぐらせる。個々の人生を、一個の少年を時に無残に切り裂くオメガバースを、罪作り設定(少年の境界)として、二人のΩが登場。所々であったろう性別問題が巻き起こすドラマが編まれる。友達関係を喪う苦しみ。第二次性徴期という嵐の到来。
だからタイトルが秀逸で、端的。
これ程真面目な制作姿勢で語られるオメガバースを読むと、これまでその作り込まれたオメガバースなる前提そのものに、あまりいい感情を持っているわけではなかったのに、それを利用して崩す手法でドラマ作りの才を見せつけられ、本作誕生のための意義が有ったか!、と考えさせられた。

akabeko先生作品読んできているが、本作は突き抜けている。
絵は人物描き分けに物足りなさがあって、どこか少年漫画風と感じ、好みのビジュアルではない。それ理由で星は、私は下げない主義。

BLはレビューしづらい性的描写だらけであることが多いが、本作品は描き処をそこにしてはいない。紛れもないBLながら本作はそれでもBLといえるだろうか、との感想だ。ユカや倫がそう見させてはくれない。94頁の涙場面は、大我が辿っている心の行程に私も想いを馳せてしまった。大我の変化を通じてオメガバースもその世界を変貌させ、巧みなストーリー。
殆どのオメガバース物は、Ωが受胎可能な位置付けであっても、そこはシーンとして見せつけられないで済むことが殆どだったのだ。ここまで人生に入り込むと、もはや、BLには見えない。
追記)KINAKO先生「僕たちは運命に嫌われている」と結構似ていると分かり、読もうか思案中。
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