D.Gray-man
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D.Gray-man

星野桂

落胆と失望

ネタバレ
2020年9月20日
このレビューはネタバレを含みます▼ デビュー作でありながら、作画作風の変わりようが激しく、大量のパクリ疑惑が浮上し、休載が多い事でも有名なこちらの作品。何故こうなったのか...読み進めるにつれて落胆と失望で強烈に顔をしかめたくなったのは私だけじゃないと思います。とはいえ、初期は、これまであったようでなかったダークな中世ヨーロッパを醸し出す世界観に加え、独創的かつ繊細で美しい作画技術に、これがデビュー作で週刊連載とは信じられないほど、完成度がとにかく高いです。当時のジャンプにゴシックでファンタジー要素が強いのは珍しく、エクソシストという設定も斬新で、極めて異例。人形編や吸血鬼編などイノセンス集めの話はどれも構成がまとまっていて、感動的なシーンにおもわず涙した事も。しかし、たちまち魅了され、のめり込む様に続きを読んだ末路が悲惨でした。7巻辺りから絵柄が変わり、物語が詰まり、以降フルスピードで劣化していきます。
着実に画力が上がった結果としての変化ならまだしも、頻繁に作者の好みで絵柄が変わり、最早その人物かどうか判断するのも困難なほどの激変。例えば、リナリーの髪を極端に短くする必要性はどこにあったのか。メインキャラの特徴を変貌させるなんてご法度、というよりナンセンスすぎます。更に全体の作風さえもガラリと変えるスタンスはプロとして有り得ません。物語自体の展開とテンポも悪く、登場人物の設定はボロボロ、特に能力がアンバランスで無理ゲーすぎて、その上ギャグも面白くない、いかにもウケを狙った描写も滑りまくる、未回収の伏線も描く気配すらないのに死ぬ必要のない仲間達が乱雑に強制退場させられ、魅力の乏しい新キャラがこれでもかといわんばかりに続々と登場...D.Gray-manという作品であり続けようとする姿勢が微塵も感じられません。最近は画集と化しており、物語も読者を置いてけぼりにしがちで、結局この作品を通して作者は何を伝えたいのか、何がやりたいのか、私には理解不能です...。どの様に完結させるか、長期連載されている他の漫画も多数ありますが、この作品に関しては、どう終わろうとどうでもいい、もう勝手にしてください、という感じ。漫画はあくまでも商業用の芸術です。自分の好みを押し付けたいのであれば、いっその事、同人誌でご活躍されればと切に願います。ここまで落ちぶれてしまうとは、後にも先にもこんなに期待してガッカリした作品と作者はこの漫画だけです。
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