沈黙の騎士
」のレビュー

沈黙の騎士

トーリ・フィリップス/原のり子

コミカルな雰囲気の中世もの

ネタバレ
2020年9月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 期間限定読み放題。
16世期イギリスを舞台にした、イギリス貴族キャベンディッシュ伯爵家の一族の恋模様を描いたシリーズの一作。
伯爵家の次男として生まれ、騎士として実力を認められつつも、幼い頃から天使の如き美貌で外見ばかりを評価され続けてきたことに嫌気がさして修道士見習いになったヒーロー。
そんなヒーローの前に、フランスから婚約者の元に向けて伯母と旅するヒロインが現れる。
初対面でお互いその美しさに惹かれ合い、ヒーローは悪魔の誘惑と恐れ距離を置こうとするが、ヒーローの心境に気付いた師によって、ヒーローはヒロインの旅の供に選ばれる。拒むヒーローに、沈黙の誓いまでさせて。
そんなヒーローの心境を知らないので、道中ヒーローにちょっかいをかけまくるヒロイン(色仕掛けではなく子供のイタズラ的なものだが)。父親にひどい扱いを受けていたらしいが、かなりしたたかというかいい性格で、そういう意味では素直に好感を抱きにくいが、その性格ゆえの行動でコミカルな雰囲気になっているので、ろくでもない一族の元に嫁ぐためのツライ旅路という悲壮感を忘れさせ、読者側は無駄に重い気分にならなくて済んでいる。
ヒーローは女を知らない訳じゃないのに、なぜここまでヒロインに惹かれるのかちょっとわからないが、禁欲生活が長すぎた故なのだろうか。それとも酷い男の元へ嫁がされると知っての騎士道精神もあるのかな。
そういう意味では、二人の気分の盛り上がりにちょっと置いてけぼりをくらう感じもあったが、中世ならではの騎士のエピソードとか、馬上槍試合とか、見せ場は楽しめた。
最後はヒロインの手の平の上という感じの、愛妻家になったヒーローも見れて、適当に満足の行く一冊だった。
シリーズものということはレビューで知ったが、原先生担当は今作のみだった。『野に咲く白薔薇』がヒーロー両親、『身代わりの婚約者』がヒーロー兄、『囚われの聖女』が今作ヒーローヒロインの娘の話。他にもヒーロー兄の庶子が主役の話が二本コミック化されている。興味のある方はどうぞ。
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