綿の国星
」のレビュー

綿の国星

大島弓子

どこまでも美しく、やさしい、猫の世界

ネタバレ
2020年9月29日
このレビューはネタバレを含みます▼ 繊細な描写と詩的な言葉回しに、どこか懐かしさを感じると同時に胸を締めつける切なさと愛おしさが込み上げてきます。いつか人間になれると信じている子猫が時夫という青年に拾われて、彼に恋心を抱きながら、猫目線で他の人間達と交流していく過程が実に素晴らしい。
愛してくれたラファエルや発情期ネコ、去勢された雌ネコ、ペルシャを共に目指したネコ...どのエピソードも幻想的で印象深いです。また、猫たちの中で独自のルールがあり、猫好きの自分としては、きっと猫って日常こんな風に思ってるのかな?と微笑ましく思えました。
個人的にチビ猫ちゃんの可愛いエプロン姿から、想像上で大人になった時の美しく気高い姿にギャップ萌えでした。
この頃の少女漫画は現代のと異なって、とても詩的で文学的だったんですね。読んでいる間中ずっと夢のなかで遊んでいるようでした。ある時は、ふりそそぐ満天の星空から、はしゃぐ太陽の光の中を泳いでいる感覚。またある時は、美しい音楽の合間を心地よく流れていく感覚。おとぎの国の世界にいるような。そう、大島弓子先生の作品はいつも切なさや、悲しさ、きらきらしたオモチャ箱を開けるような気持ちにさせてくれます。ふっと一人、窓辺で思いに馳せたい時に、思い出をめくるように開いて読みたい、大切な漫画です。
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