犬夜叉
」のレビュー

犬夜叉

高橋留美子

時も距離も二人に勝てなかった、本物の愛

ネタバレ
2020年10月4日
このレビューはネタバレを含みます▼ 高橋留美子といえば「うる星やつら」「めぞん一刻」「らんま1/2」など不朽の名作で常に感動を与え続けてきた漫画界の巨匠。こちらの「犬夜叉」は丁度世代でアニメもリアタイで観ていました。耽美でグロテスクな戦国の描写はそこはかとなく不気味で中毒性があり、テンポ良い展開で次から次へと読ませてくれます。また人物設定も実に考え抜かれており、どのエピソードも印象深く、恋愛模様も月9以上の華やかさ。男女のゆれ動く恋心はお手の物で、全ての片想いやカップル達の様子に終始ときめかせてくれます!特に犬夜叉とかごめは萌えの宝庫。
元々この物語はかごめの弱い心が根源で始まり、彼女の魂の旅を描いています。四魂の玉を狙う奈落を倒せば万事解決...ではなく、玉にすがる人間の弱さこそが最大の悪だという所が鍵。桔梗だった時代に、仲間もおらず、たった一人で妖怪達を倒し続け、愛にも恵まれず、生まれ変わっても尚、犬夜叉に会いたいという魂の叫びが四魂の玉によって叶えられ、その願いは分裂し、飛び散った事によって新たな戦いを引き寄せ、頼もしい仲間達を得て、過去の自分とも対峙し、成長していく。現に蘇ってからの桔梗はかごめの分身に過ぎず、いわば人間の二面性・光と影として対照的に描かれており、犬夜叉と再会して愛し始めた事により、生まれた嫉妬や汚い感情は桔梗で、優しさや母性といった綺麗な感情はかごめ本人という、二人で一つの魂が犬夜叉ただ一人をひたむきに想う姿は感動的。究極の愛だと思います。そして旅の終わり、ようやく二人は結ばれ、止まったままだった魂が戦国と現代を経て、愛する人と歩みたかった明日へ今度こそ玉を頼ることなく歩み始める...。時間軸で言えば、かごめの住む現代の続きが未来のように思えますが、彼女の魂の未来は犬夜叉と歩む戦国時代のその先にあったからこそ、「嫁に行った」という表現にも頷けます。そんなかごめを中心に多くの登場人物を通して、人間という儚くも強い生き物を見事に描き切った大作。また、この最終巻の表紙が物語っているように、お互いを見つめ合うのではなく、同じ方向を見つめて共に進み続ける愛を手に入れた二人の姿は、いつまでも尊い物語として語り継がれることでしょう。
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