湖畔の休日
」のレビュー

湖畔の休日

ベティ・ニールズ/葛城しずく

うわぁ陰謀を巡らした、に近い

2020年10月30日
婚約者のいる男性に、彼女は貴方に向いていないと言い、彼女の方には自分の知人をくっ付ける算段。彼女はヤな奴キャラ、という大義名分があるけど、端的に言って、「邪魔者は消せ」。その厄介払いの目論みパーティーは用意周到で、自分の装い迄抜かりないヒロインを、ヤレヤレ(嘆き)と思った。彼と二人共巻込まれの一件では、内心「労いが無いの?」とか、他にも裏表ありヒロインのキャラが信じられない。胃袋作戦も肉肉し過ぎて恐れ入る。
画策中の二人の仲をより深める為のピクニック計画も、悪知恵働きまくり。また、家に送ってもらったときだって、形式的お礼の挨拶の体を取りながら、深読み余地含みでコーヒーのお誘い。あざとく見えないように持ちかけ引き際さらり、老獪な手練手管。内心は攻め気バリバリ。と、こーんなに、婚約者嬢からしたら女狐の暗躍、油断もスキもない。私は好きになれないヒロイン。
それを読者がヒロインに自己投影するとなると、「結構な腹黒」女の成功物語では後味宜しくない。倫を外れかかってる。読者の共感獲得には、いい子ちゃんのほうがいい訳だ。略奪臭を消す為に、くっ付けた二人は悪役に置かれた。ヒロイン、働き者で、仕事キッチリお料理バッチリ、他人に目配り出来て、美人さん設定。

けれど、それ故に設けられたかの後半のヒロインの現状回復行動もまた寧ろ鼻につく。引っ掻き回しの跡は戻らないものではないか。焚き付けておきながら、今度は火消し?何と勝手な!!

絵が舞台装置面でふるっている。日本に見えない室内外描写の丁寧さが良い。コマが無数の動きの「途中の」一枚でなく、「静止画」用に一旦立ち止まらせているかのようで独特な構図に見え、この一枚この一枚と独立して説明力が強いと感じた。細部迄描き込まれ素晴らしい。
以前葛城先生作品にあった過度の写実追求とグレー多用が少し後退していた点は大大歓迎。デフォルメ乏しいと「漫画」ではないと思うから。「とっておきのキス」位が私は好き。

中盤以降心変わり顕著な彼が少し生身の人間らしくなって良い。前半は蝋人形のようだった。
二度目の彼の送り、今度はコーヒーを誘わないヒロイン(彼と婚約者との進展の為)、彼こそがコーヒーを誘って欲しいという目をしているよう、そこ、凄く良かった。

この話は、邪魔者達が片付いてくれてヒロインの御都合達成。最終的には人を不幸にして幸せになった訳でない、という納め方。
いいねしたユーザ7人
レビューをシェアしよう!