理想的な婚約者
」のレビュー

理想的な婚約者

リズ・フィールディング/牧あけみ

食堂車で出会って

2020年11月11日
出会いは仕組まれたもの。目的は、ヒロインの計画に丁度良かったから。それでも彼のことをひと目でわかっていた。但しゴシップのみを情報源とするのでなく、FT紙からも得た知識があって。同紙の何頁に載っていたなどと、如何に情報通といえど、また頁構成に一定の規則性あれど、だからと言って、ピンポイントで個別記事の頁番号迄覚えているものではないと思うのに、一体これは、精読している強調?、高い記憶力の裏付け?、数字に強い人物であることの誇張?、なんだろう(かつて読んでいたが私には絶対無理だ)。
その大体のヒロイン人物像を、生ファーガス目撃のちょっとしたミーハーぶり(役者登場の興奮)と合わせて、序盤で巧みなキャラ紹介エピソードで彼女への理解を深ませる形で物語の成り行きの背景を披露。
本作が、単独で成り立っていたとするなら、この序盤で十分以上に納得感あったことだろう。ただ、私は「恋の味つけ」を先行作品として読んだばかり。牧先生が手掛けられていることもあり、両作品でのヒロインのキャラのギャップは大いに戸惑う材料だった。
また、ニックとの距離感も、だ。
ごくたまに、目の部分が印象がかなり違うこともある。
くちなしの花って、割と細目の花弁なのでは?形状に違和感覚え調べてみたら、描かれてあるような幅のある、薔薇のように咲くのもあった。

尚、ストーリーのほうは見事なスカウト作戦成功により、ファーガスの口から出任せ話で、周囲をどんどん焚き付けて、滑稽な展開。語り口がコメディを上手に捌いて、大風呂敷広げまくる。外堀の方が容赦してくれなくなる。そこもある意味想定内。
そしてお定まりの、段々本気が入りそうに。
そこからこの話は結婚しない相手としてお互い好都合だった二人の、気持ちスイッチ入っちゃった後の対照的な様子描写。更にHQ的オチもあって万全の安心ストーリー。
こういう、あるあるの、取引から始まる恋愛のパターンは、あまりにもこのHQ世界にありふれ過ぎているからこそ、契約成立の流れや本気モード時の相互の不確実な立ち位置描写が大事。そこがしっかり読めて良かった。

ファーガスに「つがいなんだ/知ってる?/白鳥は死ぬまで同じ相手と連れ添うって」を言わせるのが効いている。 彼の愛情が揺るぎないであろうこと、ロマンチストでもあったこと、が同時伝わって、更には「恋の味つけ」とを1本串刺しで貫いて、両方読む者には一興となる。
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