星は見ている
」のレビュー

星は見ている

ベティ・ニールズ/小林博美

お天道様が見ている、でなく、星が見ている

2020年11月19日
巻頭頁の青が目が覚めるように綺麗。トーマス・ハーディの詩だというこの作品の、母の解釈と彼の解釈とが見事に効いている。
有名高級食器の縁取模様を連想する素敵な色目も調和、中央の星空をバックに印象的に詩が収まっている。冒頭から期待値上昇。
原作者先生の定番、英国人看護師と和蘭国人男性医師のロマンス、毎度二人の流れにパンチは無い。
ただ本作は彼が分かり易い。ヒロインがとてもいい子。
彼の妹と3人の子供達がストーリーを進める。本書名が成り行きを照らすようにして。実家の長年の気がかりも、胆力、実行力、財力で彼が、スパッと神がかりタイミングで解決しスーパー頼もしい人。展開巧み、さすが小林先生。まろやかで優美なラインが作品に絶大の安定感を添える。
ただ、小林先生の描かれる男性にしては、36歳なのに少年顔っ気有り。そして、教授? お城?資産家?。ほぼ毎回の、この原作者先生のHQの標準装備。いい加減そろそろ避けたいと思ってきているのに、このところ荻丸先生に小林先生と、立て続けに新しいお顔で実力者のHQ漫画家先生方続いて、ついつい読んでしまった。でも大正解。

ただ、少し筆致荒れた? 特に人物。そこが心残り。説明されてるヒロインのキャラ、見た目の方には余り感じさせない。ママチャリ?のサドル位置が日本ぽい。舞台は60年代、女性ならこうあるべき、の社会通念に嘆息。
コマの見せ方、切り取り方、描いてるもの、どれも確か。黒色欲しかったかな程度。

これ、ロマンスに仕立てなくても、普通に少年少女向け読み物で、長男主人公でも良かった感じ。
自分が悪いのに、他人のせいにするのは大人にも居るけれど、子どもの強がりやその場逃れの嘘、能力の限界を把握できてない冒険したがりの気持ち、などなど、時に年頃の子の中に見る危なっかしさを描いている。叱責を告げ口のせいと誤解するのがリアル。そして、口から出任せでも、自分の子どもの言い分の方を信じてしまう親の姿など、遠目に眺めてきたような景色があって、それもリアル。そこが、おおごとに発展、という規模感は別としても。
最終場面冗長。
どこに住み、仕事は続けられたか、積み残した。

英国人もオランダ人も反感を隠さずにぶつけて来て、私自身は旅先で結構な意地悪にもあったりしたけれど、これだけ英蘭のロマンスを読んで来ると、当たり前の事だが、人はそれぞれだ、色々な人が居るのだと、思わされる。
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