財界貴公子と身代わりシンデレラ
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財界貴公子と身代わりシンデレラ

栢野すばる/八千代ハル

所々、違和感がありました。

ネタバレ
2020年12月2日
このレビューはネタバレを含みます▼ ストーリーは素敵で、文章も読みやすいです。さすがは、栢野先生。皆さん書いているように、「敏腕CEOと秘密のシンデレラ」のスピンオフで、前作が凄く好きだったので、わくわくしながら読みました。昭和の雰囲気も出ていて良かったです。
でも他のレビュアーさんが指摘しているように、その時代にしてはちょっと違和感のある言葉もいくつかありました。それ以上に私が気になったのは、設定についてです。流してしまった方が作品の本質を楽しめるのかも知れないけれど、ある意味雑だなぁと思ってしまうような設定です。せっかく良い作品なのだから、細かいところまで整えて欲しいというのは、読者のわがままでしょうか?以下、箇条書きにします。
①ゆり子は、伯母がケチって高校の修学旅行にも行けなかったのに、なぜ大学の数学科を卒業出来たのか?当時は大学進学率もそれほど高くは無かったし、ましてや女性、ましてや数学科なんて、よほど恵まれていなければ行けなかったのでは?小世が頑張ってくれたから、行かせて貰えたのかもしれないけど、嫁にいくにしても、(伯母のお金のために)金持ちに売られるにしても、その時代なら女性の大卒の肩書きは、むしろマイナスポイントなのでは?
②孝夫は一度御曹司の立場を捨てたけど、自力でのし上がり、その結果実家(の企業)から呼び戻されるほどになった。それは素晴らしいと思いますが、そんな経歴ならば、子供たちに家業を継がせることにもそれほど拘って無いのでは?と思ってしまいました。孝夫の四男である、千博(秘密のシンデレラのヒーロー)は、教師になりたかったけど家業に就くことが決まっていて、数年だけ塾講師としてモラトリアム期間を過ごしていた時にヒロインと出会ってますが、上に3人も兄がいて、父もずっと御曹司として生きてきた訳でも無いのだから、やりたい仕事に就いても良かったのでは?またそれを認めてくれそうな家庭なのでは?と思ってしまい、違和感がありました。
③伯母の馬鹿さが謎。敵役の馬鹿さはラノベあるあるかもしれないけど、よくそんな浅はかさで一応名家の奥さまが務まったなと感心しました。伯父も、実印は実家に預けてるのに、大事な登記簿をあっさり伯母に奪われてるのも、何だか変。
他にも細かくいくつかありましたが、意外とこういう地味な不協和音はじわじわと効いてくる気もします。秘密のシンデレラの方が、違和感は少なかったと思います。
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